革新機構・田中社長が辞任会見(全文1)この水準の報酬が欲しいとは一度も言ってない
「信義にもとる」という言葉を使った経緯
田中:このころから経産省から聞いていたわれわれのミッションについて、政府部内での調整が進んでいないのではないかという疑念が芽生えました。本来、確定していたはずの報酬内容の細目に関する協議にも応じることにいたしましたけれども、一時期は毎日、経産省の担当課長が現れて、財務省との協議状況について私に報告し、相談しに来ておりました。当然のことながら、私はこれが社長の仕事か、というふうに思ってました。しかしなんとか着地させるべく最大の尽力をしたつもりです。しかしこの過程で代表取締役4人の経産省に対する不信感はいやが応でも募りました。 なぜなら細目の議論を聞いておりますと、これまで経産省から伝えられてきたことが次々に変更され、このJIC設立に関して、バイブルだと考えておりましたリスクマネー研究会報告が、政府全体の方針にはなっていなかったことが次第に見えてきたからです。 このころ、代表取締役4人で毎日協議をしておりましたけれども、われわれ4人の間で、これで本当にわれわれが共感した目的を達することはできるのかと、こういう疑念が強くなり、経産省に対する不信感が強くなった時期でございました。それでもなんとか西海岸での第1号ファンドの設立にこぎ着けましたけれども、今度は11月の初旬に、そもそも経産省が自ら仕組みをつくってわれわれに対して提示をしてきた報酬に対して批判が発生して、経産省は国内外の新規採用者の報酬などを含めて、一方的に白紙撤回をいたしました。 私どもからこの水準の報酬は欲しいなどと言ったことは、当然ですけどもあり得ません。一度もありません。私がこの職務を要請され、応諾した時点では、報酬の話すらありませんでした。つまり、根本的な問題は、9月21日に経済産業省官房長は、書面で約束し、それに基づいて取締役会が決定した役員報酬を、かかる取締役会決議も無視し、一方的な都合で白紙撤回する行為、そのことです。私は糟谷官房長に信義にもとるというのはこのことだということを言いました。本日お配りする、社外取締役の方々のコメントにも明確に表れておりますとおり、この経産省による信頼関係の毀損行為、これが9名全員の辞任の根本的な原因であります。 このところ経産省から、信頼関係が毀損されている状況で国として2兆円の資金を任せられないとのレトリックが繰り広げられています。その根拠となっているのが、私が11月24日の嶋田次官との会合で席を立ったことにあるようですが、しかしながら、24日の会談以前にわれわれの間ではすでに経産省に対する強い不信感が醸成されておりました。嶋田次官が、その挽回措置を提案してくるのではないか、という期待をもって会談に臨みましたけれども、結果は真逆でありました。その会談で私は、再び信義にもとるという言葉を使いました。