こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】ミニバンの主流からあえてハズしたホンダの意欲作[ジェイド]はなぜ売れなかったのか?
■M・M思想を徹底追求した生まれた超高密度低床プラットフォーム
「人のためのスペースは最大に、メカニズムは最少に」という、ホンダが掲げてきたM・M思想をもとに長年培ってきた低床化技術をさらに進化させることで、低全高のスタイリッシュなフォルムでありながら、6名乗車ができるスペースが確保されている。燃料タンクや排気システムを薄型化し、足まわりや床下のパーツをコンパクトにしたうえで効率よく配置したことが低全高でも多人数乗車ができる理由だ。 ただ3列シートを備えているだけでなく、1列目から荷室スペースまでを独立した3つのゾーンに分け、それぞれの空間で機能や質を追求することで低全高ながら理想的なパッケージングを実現している。 なかでも2列目は左右独立したキャプテンシートを採用したうえで、「Vスライドキャプテンシート」を採用。左右のシートを約20°斜め内側に後退させることで、ハイループタイプに迫る足もとスペースのゆとりが確保できる。 3列目はお世辞にも広いとは言えないが、ハイブリッドシステムの要でもあるIPUをセンターコンソールに配置することで、ロールーフタイプにしては広い荷室空間と3列目シート使用時のゆとりを確保している。 2015年5月には、直噴1.5L VTECターボエンジンを搭載した「ジェイド RS」を発売。常用域で2.4Lエンジン並みのトルクを発生するパワフルでスムースな加速と、高い静粛性を両立し、多人数での乗車時や坂道でも余裕のある走りを実現しながら、18.0km/L(JC08モード)という優れた燃費性能を達成。 2018年にはマイナーチェンジを実施し、1.5Lガソリン車を追加するとともに、ハイブリッド仕様に2列シートの5人乗り仕様を設定し、バリエーションの拡充を図った。しかし、スポーティなイメージを強調したRSの設定、スポーツ ハイブリッドi-DCDのギアレシオと駆動力制御の見直し、ホンダセンシングを全タイプに標準装備するなどのテコ入れも虚しく、販売は振るわず2020年7月には生産終了。 ジェイドが登場する以前から、国内のミニバン市場ではロールーフタイプの存在感が希薄となり、完全に市場を失っていた。ミニバン市場が成熟して箱型以外は選ばれない、しかも実用性という点ではワゴンよりもSUVがマーケットのメインストリームになりつつあった状況では、ジェイドが積極的に選ばれるクルマではないことは自明と言わざるを得ない。 ピラーからフード先端までつながる伸びやかなキャビン造形で構成されるルックスは、ミニバンとして抜群にスタイリッシュだったし、低全高のわりに多人数が乗れるというのは箱型ミニバンを嫌うユーザーにとっては魅力的だった。もしもオデッセイが爆発的にヒットしていた1990年頃にジェイドが登場していたら、間違いなくオデッセイと双璧をなすモデルとなっていたはずだ。
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