大会名は「連帯」…水害支援を名目に開催されるMotoGP最終決戦の地がバルセロナに決まるまでの混乱の舞台裏
次々と消えゆく代替候補
こうして、最終的な舞台としてバルセロナに決まるまでには、裏側で様々なことが検討されていた。 当初もっとも有力だったのは、マレーシアGPが開催されていたセパン・インターナショナル・サーキットで、2週間後に再度開催するというものだった。しかし、最大の問題はタイヤと燃料の調達と輸送。タイヤメーカーは熱帯の国マレーシア用のタイヤを2週間後までに準備できず、燃料も船での運搬となるため時間的に難しいということで候補から消滅した。 次にカタールGPが開催されるドーハが候補にあがった。11月29日からF1が開催されるロサイル・サーキットは、レースに向けての準備が進んでいるため絶好の舞台と考えられた。しかし、ここもタイヤと燃料などの理由で消滅。 そんな経緯を経て、バルセロナでの開催が決まったのはマレーシアGPの決勝日だった。しかし、その翌日にそのバルセロナでも大雨と洪水による被害が発生。開催を不安視する声も聞こえてきたが被害は一部地域であり、カタルーニャ州政府の承認を待って5日に国際モーターサイクル協会(FIM)とドルナから、正式発表が行われた。 準備期間が事実上1週間しかないという状況で開催にこぎつけたドルナ・スポーツと、それを受け入れたカタルーニャ・サーキットの決断にはとにかく驚かされるばかりだが、コロナ禍という困難な時期も開催を続けてきた経験を活かせば、開催そのものは大きな問題ではなかったのではないかと容易に想像できる。 それ以上に問題だったのは被害が拡大している中での大会開催の是非であり、「バレンシアでは開催すべきではない」と声を上げていた選手とチームも、支援を目的としたバルセロナでの開催には賛同した。それが開催に向けての大きな原動力となったことは間違いない。
タイトルを懸けてのレース展開は?
運営団体のドルナがスペインの企業であること。そして年に4回(ヘレス、バルセロナ、アラゴン、バレンシア)開催されているなど、もっともモーターサイクルレースが盛んなお国柄だけに、この厳しい状況の中で開催にこぎつけることができたのではないだろうか。 11月中旬のバルセロナの気温は平均で最低12℃、最高18℃。シーズンを通してもかなり低い気温での開催となるが、地元の期待を一身に集めるマルティンは自身初となる最高峰クラス制覇を狙い、イタリア出身の昨季王者バニャイアは、マルティンとの2年連続最終戦決着を制しての3連覇を目指す。 最終戦「モチュール・ソリダリティ・グランプリ・オブ・バルセロナ」は、今季もっとも熱い戦いとなることは間違いなく、どちらがチャンピオンになっても、レースファンにとっては長く記憶されるシーズン最終戦になるはずだ。
(「モーターサイクル・レース・ダイアリーズ」遠藤智 = 文)
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