唯一無二のスカイレール、26年目で惜しくも廃止
【汐留鉄道倶楽部】広島市郊外に、以前からとても気になっていた「鉄道」があった。全国、いや世界でもここだけというロープウエーとモノレールを掛け合わせたような「スカイレール」である。昨年末で廃止されると報道で知り、知ったときは時遅し、「一度も乗れず残念だったなあ」とやり過ごしていた。ところが代わりの交通手段となるバスの準備が遅れ、スカイレールは今年4月末まで営業が延長されることになった。「これは朗報だ」と思い直し、廃止まで1カ月を切った4月の初め、旅行で関西まで行ったついでに(ついでという距離ではないが)、足を延ばしてきた。 【動画】スカイレールが運行終了 広島、国内唯一のシステム
スカイレールは、広島駅からJR山陽線で東に約10キロ走った瀬野駅の北口と、同駅のすぐ北側に広がる高台を開発した大規模な住宅団地「スカイレールタウンみどり坂」(広島市安芸区)の中心とを結ぶ延長1・3キロの乗り物で、通勤、通学など日常生活の足となるべく1998年に開業した。 中間駅が一つあり、全線ほぼ勾配、標高差約160メールを約6分で結ぶ。懸垂式のモノレールのように空中に設けた鋼製の桁に、ゴンドラのような車両がぶらさがる。座席は8席で定員25人。 車両を動かす仕組みがユニークだ。ロープウエーのように鋼製のロープが桁の上を走っており、起終点間をぐるぐる回っている。そのロープを、車両の上部に伸びた腕の先がつかんで動く仕組みだ。出発する時と停車する時だけはロープを離し、リニアモーターを利用した装置でスムーズに駅のホームを発着できるようになっている。 一般のモノレールに比べれば建設費が安く、ロープウエーに比べれば雨風に強い。車両は無人で運行され、多客時には車両を増やして運行できるなどメリットがあり、導入当初から新しい交通手段として注目された。
訪れた日中は15分おきのダイヤ。170円のQRコード付き切符を改札でピッと読み込ませ、すでにホームで待っていた車両に乗り込むと、ほどなく発車。車両はぐんぐん斜面を登りだした。時速15キロと数字上の速度はゆっくりだが、斜面が結構きつく歩くことを考えれば気持ちいいスピード感だ。 中間駅を過ぎると眺めが一段と良くなり、緑の山々に囲まれた住宅地の全貌が現れてきた。さきほど乗ってきた山陽線が眼下に見える。揺れはほとんどなく走行は滑らか。あっという間に6分間の初乗車は終了した。 終点手前の線路下には公園が広がっており、ここから一望する近隣の山々を背景にしたスカイレールの姿は絵になった。 廃止の理由について運行会社は、当初の期待ほど乗客数が伸びず赤字が続いたためとし、営業開始から四半世紀が過ぎて老朽化とまではいかないが、今後本格的な機材の更新時期を迎えることから、経営判断として更新せず廃止を決めたという。