103万円の壁が問う財源問題、手取りは一時的に増えるけど若者世代の将来負担に、削るとすれば福祉・地方関連予算か
■ 大学無償化と潰れそうなFラン大学の問題 さらに、紆余曲折を経て、なぜか学生バイトの是非という話になっています。どうしてこうなった。話が雑すぎんだろ。 大学にせっかく入学したのに、学費を稼ぐためにアルバイトに精を出す苦学生の皆さんがおられるのは事実であります。ただ、私が大変よく知っております某国立大学および某大手私立大学の学生生活アンケートなど見返してみますと、アルバイトをする学生が多いのは、有意に「地方から単身で都会に遊びにきた学生さん」であります。 たぶん、どこの大学でも、バイトしている学生は地元からの仕送りではやっていけないので、仕方なくアルバイトをしているんじゃないでしょうか。 また、俺たちの愛する小野寺五典師匠が自由民主党の政調会長として、どこかの講演で「学生は将来のためにしっかり勉強してほしい」「学業に専念できるような支援を国会で議論すべきだ」と話した内容そのものは100%ピュア正論なんですが、それだとダイレクトに「じゃあ大学の授業料を無償化すれば」っていう短絡的な議論になります。 で、実は学生バイトについては、親の特定扶養控除は立憲民主党さんの合意もあって150万円ほどに増える方針で固まっていて、もうこの問題はなくなっています。まだ騒いでいるのはあんまりよく分かってない人たちなんだと思うんですよね。どうなんだ、そうじゃねえだろ、という話は長くなるので、ポンデベッキオさんや飯田泰之さんの議論を流し読みでいいので見てみてください。 ◎Fラン大学は本当に無意味なのか? |ポンデベッキオ ◎大学を無償化してはいけない|飯田泰之 大学授業の無償化については国民民主党以外はおおむね賛成ぽい雰囲気なのですが、大学全入時代に突入し、定員割れ大学が続出しているのにゴミみたいな新設大学が続々と認可されて開校したため、進学希望者は入る大学さえ選ばなければ、名前を漢字で書くと入学できるクロマティ大学化してしまう恐れもあります。 単純に潰れそうなFラン大学が日本人学生をかき集める方便にしかならない可能性があるうえに、最近では「4年制大学を卒業しさえすれば、まあまあ良い仕事にありつけて社会人生バラ色待ったなし」というわけにもいかない統計もたくさん出てきました。 うっかり詳細を書くと大変不適切なので省きますが、要約すれば、「就職目当てにクソ大学に入っても、払った学費の元が取れない」わけでして、これはもう大学無償化の議論の不都合な現実と言えます。 それでも大学無償化が必要なのだということであれば、外国人留学生に頼らなくても学校運営ができるレベルの大学がどれだけあるのか、というところから精査していって、無償化するに足るまあまあ良い大学と、お荷物だから早く潰れてもらいたい落ち目の大学とにしっかり分けないとゾンビ大学みたいになってしまいますよという話は申し添えておきます。(続く) 山本 一郎(やまもと・いちろう) 個人投資家、作家 1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し、『ネットビジネスの終わり(Voice select)』『情報革命バブルの崩壊 (文春新書)』『ズレずに生き抜く 仕事も結婚も人生も、パフォーマンスを上げる自己改革』など著書多数。 Twitter:@Ichiro_leadoff 『ネットビジネスの終わり』(Voice select) 『情報革命バブルの崩壊』 (文春新書) 『ズレずに生き抜く 仕事も結婚も人生も、パフォーマンスを上げる自己改革』(文藝春秋)
山本 一郎