103万円の壁が問う財源問題、手取りは一時的に増えるけど若者世代の将来負担に、削るとすれば福祉・地方関連予算か
■ 所得控除が実現した場合の削りしろはどこか? とはいえ、政府も無責任に「政治で決着したので再来月から所得控除を引き上げます」とはできません。地方自治体の中には自主財源が大きく減る地域があるうえに、自治体予算にぶら下がっている福祉事業がストップしてしまうからです。 私の知る限り、現在のところこれらの猶予措置をやる予定もなければ、自治体財源を手当てするために必要となる新法を考える話も立ち上がっていません。いろいろやるのは構わないけど、本当に零細自治体死んじゃうんだが大丈夫か、まあ大丈夫じゃないだろうな、というのが正直な私の感想です。 民間も、たいしたクライアントも抱えていないその辺の街角税理士であれば対応できるかもしれませんが、福祉事業者など民間事業者は自治体ごとに認証スキームが異なるため、制度や控除率を突然変更すれば、関係先通知からシステム改修まで大きな問題が起きます。 政策的には妥結できてもロジで死ぬというのは、コロナ禍でのワクチン配送からマイナンバーなき定額減税まで、何度も繰り返されています。自治体泣かせの作業は政治の都合でたくさん発生するのが世の常なのです。 さらに、所得控除が先に実現した場合、国家的には歳入不足に陥りますから、つなぎとして国債発行を余儀なくされます。この国債を実際に返していくのは、国民民主党が救いたかったはずの勤労世帯・若者世代です、 国家の税収が上がっている、特別予算で財源はまかえるなどとも言われていますが、インフレで上がった部分を含め、毎年の税収は次年度以降も保証されるものではありません。 いわば、一度、競馬で勝ったご主人が気を良くして、「お父さんやめて」と妻娘に泣かれながら家のカネを持ち出し馬券売り場に意気込んで向かうようなものです。 なので、国民民主党が主張するような政策を実現せしめるためには、せめて財源だけは何とか確保しなければなりません。その場合、最初に削らないといけないのは福祉予算であり、地方関連予算になっていくだろうなあとぼんやり考えています。 実際、どこをどのくらい削ったらどうなるのかという話は、俺たちの財務省も私らシンクタンクも、(いやいやながら)総出で検証しています。何らかの政治決着で大混乱に陥るという現実を受け入れたうえで、「やるんだ」となったらこの辺が着地じゃないかというシナリオは作り始めています。 まあ、本当にやったら、後からみんな嫌な思いをして後悔するんだろうなあ、と思うんですが、ボクのせいじゃありません。