復興進む福島県 万博で発信 避難区域など15市町村出展へ 自然や文化、食と農、最先端産業
東京電力福島第1原発事故で避難区域が設定された福島県の被災12市町村といわき、相馬、新地の合わせて15市町村は2025(令和7)年の大阪・関西万博に出展する。「いのち」をテーマに掲げた万博で福島県の自然や文化、食と農、最先端の産業などを発信し、東日本大震災と原発事故で傷ついた環境の着実な再生と復興の歩みを世界中の人々に知ってもらう。期間は5月下旬の5日間程度を予定。経済産業省などが設けるスペースに出展する方向で調整している。 15市町村が予定している出展内容は【下記】の通り。来年5月20日から24日までの5日間を想定し準備を進めている。被災地の未来が展望できる内容とし、風評を拭い去る。産業の一層の活性化やホープツーリズムをはじめとした県内観光の推進に弾みがつくと関係者は期待している。 田村市は地域を挙げて進めている昆虫の聖地づくりを紹介する。あらゆる「いのち」のつながりを感じ、共に守り育てる―との万博の理念に共鳴する取り組みとして福島県の里山環境の豊かさや多様な生態系をアピールする。南相馬市は相馬野馬追を取り上げ、地震と津波、原子力災害という未曽有の大災害に直面しても地域住民がつないできた伝統文化の力強さを伝える。
最先端の分野で産業再生を目指す福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想に基づき県内で活躍する企業も登場。ロボットや航空宇宙関連などの産業集積が進む現状を知ってもらう契機にしたい考えだ。 万博は国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)達成への貢献を開催目的に掲げている。SDGsに沿って被災地で動き出している農業復興の挑戦も広く発信する。いわき市や川俣町、飯舘村などが目玉にする方向で検討している。田村市のクラフトビール醸造会社ホップジャパンは資源を無駄なく循環させる試みを始めており出展を計画した。 展示方法は工夫を凝らし「イノベーション」や「アクティビティ」「エネルギー」など関連した分野ごとにし、訪れた人を飽きさせない空間とする。巨大スクリーンやステージを設け、動画で被災地の今を紹介する。現地との中継企画も検討している。さまざまな分野で活動する15市町村の人々によるトークセッションや交流会なども催す方針。会場には15市町村の地図をかたどった巨大なテーブルも置くという。