ジム・ロジャーズ「日本の円安が心配でならない。日本は大丈夫」という考えは間違いである
今、世界は、通貨よりも物価が上昇するインフレ傾向にある。ロシア・ウクライナ戦争の影響も大きい。このような状況のもと円安が加速し、世界中の投資家たちから日本円は捨てられ始めたのである。 ■円安の原因と日銀政策の見直しの必要性 現在の日本の状況を見ていると、イギリスが破綻したときの状況と似ているように感じられ、私は心配でならない。 そもそも今回の円安の原因は何なのか、考察してみたい。短期的な原因は、アメリカの中央銀行であるFRBが、大幅な利上げを実施したことだろう。日本のメディアや専門家にもそのような論調が多く見られるし、実際にアメリカの利回りの情報や状況により、円の相場が影響を受けていたことは事実だ。
しかし、円安の根本原因は他にあると私は見ている。日銀の政策である。金融緩和政策と称し、日銀が日本円を刷り続けた結果、日本円の価値が下がったと考えているからだ。日銀は2016年以降、金融緩和政策を強化するために、指定した利回りで国債を際限なく買い入れることを決定。その原資として、日本円を際限なく印刷し続けた。 自国の通貨を刷り続ければ、価値が下がるのは必然であり、これは経済に詳しくない人でもわかるシンプルなことだ。つまり、日銀がこのような姿勢を改めない限り、通貨安は続くだろう。2022年12月に、このような金融緩和策の方針転換を決めたが、あくまで一部見直しに過ぎないと私は見ている。
財務上の問題を抱える国家では、通貨が値下がりする現象が必ず見られる。通貨の本当の実力を示す日本の実質実効為替レートの2022年における数字を見ると、73~86程度で推移している。つまり、日本円は実に30年前の安値まで落ち込んでいると言える。 日銀の政策により円の価値が下がっている状況の中、逆にアメリカは利上げしているので、多くの投資家や資産家は円を売ってドルを買う、という動きに出たのである。もちろん、通貨を購入する理由は利回りだけでなく、その通貨を扱う国が安全であるかどうかといった点も重要な判断要素だ。そういった観点では日本円は魅力的であり、リスク回避のために持っておく、という投資家もいるだろう。