ジム・ロジャーズ「日本の円安が心配でならない。日本は大丈夫」という考えは間違いである
資産における現金・預金と、株式・投信、保険・年金といった商品の割合を、日本、欧米とで比較したグラフ(下図参照)を見ると、このあたりの事情が垣間見えてくる。確かに、日本人の資産における現金・預金の割合は多い。そのため、現金・預金は多く貯金している、とイメージしがちだ。 さらに、日本ではシニア世代が投資をあまり行ってこなかったとのイメージもある。しかしこちらもあくまでイメージであり、実際には数十年前から日本人のシニア層が国内はもちろん、海外のマーケットに投資する機会は開かれており、投資に積極的であったシニアの人たちも大勢いる(下図参照)。
ところが、日本から資金が流出することを危惧した日銀がメディアに対して、そのようなトピックスやニュースを伝えないように働きかけていたのではないか、と考えることもできる。ただこのような取り組み、いわゆる情報操作は日本に限ったことではないのではなかろうか。 多くの国ならびに、各国の中央銀行でも似たような状況が見られることがある。たとえば、アメリカにおいて、国内メディアが国民に対して、「アメリカよりもドイツのマーケットで株を買ったほうがいい」と助言し、強い反発を受けるようなことだ。
ただし今述べたことは、何十年も前の話だ。今では、国内外のありとあらゆる正確な情報を誰でも簡単に入手できるようになった。いずれにせよ私が言いたいことは、日本のマーケットに積極的に投資を呼び込むことが重要であり、実現できなければ日本衰退の一途をたどるだろう、ということである。 ■円安で訪れる「通貨危機」の可能性 円安が止まらない。現在の円安相場は、2022年3月ごろから始まった。当時110円台半ばで推移していた円ドル相場は、3月下旬になると120円台まで下落。さらに下落を続け、2022年10月には150円台に迫る。
このような急激な円安局面を受けた政府は、2022年9月と10月に、大規模な為替介入に踏み切った。具体的には2022年9~10月の間で6兆3499億円を投入し、円を買った。 政府が為替に介入したのは24年ぶりであった。先の投入金額が前回の金額を大幅に上回る、1カ月の間の為替介入額としては過去最大の金額であることからも、歴史的な円安であったことが窺える。 その後、一度は円安は収まりかけたように見えた。だが、2023年から24年にかけて再び円安傾向となる。2024年の4月29日には34年ぶりという160円台の大台を突破。本稿を書いている8月8日現在では、世界中で株価が急落している状況も関係し、140円台に戻っているが、円安状態は依然として進んでいる、と言えるだろう。