beabadoobeeが語る成長とありったけの本音「音楽は私にとってマジでセラピー」
「成長」を後押し、リック・ルービンとテイラーからの学び
―インターネットがあらゆる物事を大袈裟にしてしまったり、他人のパーソナルなことに足を踏み入れてしまいやすくなったりする問題について過去にお話しされていましたよね。これはメンタルヘルスともすごく関連性のある話だと思って。パーソナルな関係性をファンとも持ちやすいのと同時に、例えば新たな音楽的なアプローチに驚くファンもいるかもしれない。どのようにして音楽的に、商業的に、数字的にここまでの「成長」と向き合ってきたのか、そしてファンの期待とご自身の成長とのバランスをどうやって保ってきているのか、とても興味があります。 Bea:やっぱ「昔と同じ」にずっとしがみつくのって無理だよね。成熟して成長するためのごく自然な過程であると理解しなきゃいけない。自分の過去の楽曲も大好きだけど、それから私は超いろんな音楽を聴いてきてるし、歌も演奏も超いろんな経験を積んできている。ミュージシャンってそうやって成長するものだよね、って。それに抗うことはできないし、その変化を受け入れられない人がほとんどだってことも納得しなきゃいけない。 でも、心の底では……マリブを出る前にリック(・ルービン)が私に言ったことを思い出すんだけど。私はとにかく、自分と同じくらい、みんなにもこのアルバムを好きになってほしい!っていう気持ちがあったんだけど、リックは何回も「君はこの作品が好きか?」と聞いてきた。「もちろん」と答えたら、「じゃあそれがすべてだ」と言われて。それを心に留めておいて、何回も自分に言い聞かせないといけないことだと思うようになった。自分が一生懸命アルバムを作ったのなら、すべてがバランスが取れた感じになる。もうそこまで来たら、誰がどう思うかとか、リリースすることに対する恐怖もなくなっていくというか。それを自分に言い聞かせながら、できるだけ「普通の生活」をするように心がけてる。もうずっとSNSに張り付いてるし、SNSも大好き! だけど、何事もやりすぎは超悪いし、実際一歩外に出てみると、ネットで書かれてることなんてまるで存在しないみたいな気持ちになる。だから最近はそれを意識してるし、外が晴れてるとそれはやりやすいと、胸を張って言えるよ。なんせロンドンは最近ずっと雨だから、気分もちょっと悲しくてね。でも今日は久々に晴れたから最高! SNSの狭い空間から抜け出しやすくなる。 ―そういう意味で、カリフォルニアでのレコーディングが何か作品に変化を生んだりしましたか? Bea:うん、ロンドンのせわしなさとかストレスとか不安とか、全てから離れることができた。私は、特にめっちゃFOMO(取り残される不安)がある方だけど.....例えばハロウィンの時期にはLAでたくさんのパーティーがあったけど、人生で初めて、「あのさ、あのパーティに入ろうと思えば入れるけど、でも今私たちがいる場所が最も入りづらい特別な空間じゃない? ここから出る理由なくない?」ってなって、FOMOは1ミリも感じず、音楽に完全に没頭できた。それはかなり助けになったと思う。 この投稿をInstagramで見る beabadoobee(@radvxz)がシェアした投稿 ―日本のファンは、リック・ルービンとのコラボレーションについて興味があると思います。彼は業界の大物ですからね。 Bea:本当にスピリチュアルな体験でした。マジで、最初にシャングリ・ラに行ったときは、いろいろな噂を聞いていたのもあって、「本当に来るのかな~」なんてうっすら不安にも思っていて。でも、実際にきてくれたし、彼に会えない日が何日かあったとしても絶対に戻ってきてくれて、言うべきことがあれば言ってくれるし、何もなければ私たちの好きにやらせてくれた。それはアルバムにとってもすごく良い効果をもたらしてくれた。だって最終的には自分と自分が作るものを信頼してるし、リックと共同プロデュースしてくれたジェイコブ(・バグデン)も彼自信を信用しているし、私も彼を信頼している。だからリックは決して過干渉ではなかったけど、いっぱいアドバイスや知恵を共有してくれたり、「え、これいるかな?」って思うようなメモとかも私ていたりするけど、でも実際にその通りにやってみると、もう全然違ってくるし、最初に疑ったこと自体が馬鹿みたいに思えてくるわけ。 ―具体的な例をいくつか教えていただけますか? Bea:例えば「One Time」は、元々はシンプルなベースラインだったんだけど。それと一個、私たちとしてはこれでいいじゃんっていうコードがあったんだけど、リックはそれをどうしても変えたくて、変えないとめっちゃ気持ち悪くなるとか言って。「どういうこと?」とか思ったんだけど、1日かけて新しいベースラインを探ってみて、その例の一個のコードをリフに変えたら、それだけで曲を急に昇華させたし、超面白くなったの。「This Is How It Went」みたいな曲に関しては、リックは曲の背景も全部知ってるし。だって、私あのスタジオでほぼ1カ月半生活していたから、全部の曲の裏のストーリーを彼に伝えなきゃいけなかったし。それで彼は、あの曲のブリッジは超エモーショナルでどストレートで、アルバムの中で最もリアルな場面だって言うことを知ってて。そしたらリックは、ギターを全部そこでミュートして、ストリングスだけでアカペラで歌えって言ってきて、最初は「音楽が全部消えたら、大袈裟すぎない?」て思ってめっちゃ怖かったんだけど、いざやってみたらすごく理屈が通っていたし、超いい意味で芝居がかったの。そういった瞬間は本当に助かった。 ―その経験は、他のアーティストとコラボすることに対する見方を変えたりしましたか? Bea:特にプロデューサーと仕事をする時に対する意識が変わったと思う。強いて言うなら、自分のソングライティングや自分が作る音楽に対して自信を持つべきだっていうことがよくわかった。今作は確かにコラボレーションではあったけど、その中でも自分の選択に対しては自立した決断ができていたし、自分の意見も常に聞いてもらえていると感じました。そういう意味では、ロンドンでも作れたようなアルバムだとは思った。たくさんの人とコラボレーションすることは今でもちょっと抵抗があるけど、今回の経験を通して、何に関しても「機会があったらやってみるべき」ということに気づけた。で、そのことについては「Beaches」という楽曲で歌っています。 ―成長についてよく言及していますよね。テイラー・スウィフトのファンとして、彼女とのツアー経験や得た知恵についてお聞きしたいです。 Bea:一つ学んだのは、3万人とかの超大勢の前で失敗しても、10人の前で失敗しても、実はあんま変わらないってことかな。クソ失敗しても次の日に起きてる頃にはまるで何も起きなかったかのようだし、失敗はそんなに大したことないってわかったとう意味ではあのツアーを通してかなり自信がついた。意外とみんな気づかないんだよね。それと、テイラーの曲のブリッジに対する執着はとっても興味深かった。個人的にはブリッジは今までそんなにこだわっていなかったくて、「はいはいこれからmiddle eight(真ん中の8小節)の時間ね、とりあえず何かぶちこんでおけばいいんでしょ」みたいな感じだったんだけど、ブリッジだけで曲をあんなに変えられるんだ、っていうことをテイラーの生演奏を通して学べたし、このアルバムを書いているときにもすごく意識したことだった。ていうことで、テイラー・スウィフトありがとう! ―へー、おもしろ! 社会全体、そして音楽業界におけるアジア系の人たちの活躍を応援する動きが出てきていますよね。(アジア系ミックスである)レイヴェイとコラボをしたり、ご自身もフィリピン系アーティストのレプリゼンテーション(表象)について語ってきましたが、このムーブメントについてどう思いますか? カテゴライズされることにエンパワメントを感じますか、それとも制約を感じますか? Bea:両方かな。時には単なる女性アーティスト、または単なるアーティストなのにな、って思うこともあるし。なんで「女性」ってわざわざつけるかというと、音楽業界における私たちに対する様々な不平等なことがまだまだ存在するということが見えるから。人種に関してもないわけじゃなくて、議論がとても大切だと思う。自分が子供だった頃は、フィリピン系、もしくは東南アジア系の女の子でロックミュージックをやっている人をずっと見たかったし。そういう存在がいなかったからこそ、今もこうして活動を続けるインスピレーションにもなっている。だってそもそも、この活動もジョークで始めたし、それで急に注目され始めて、続けたほうがいいのか、やめて保育園の先生になったほうがいいのかもわからなくなっちゃって。でも他の様々な素晴らしいアジア系のアーティストがどんどん活躍しているのを見て、レイヴェイみたいに最高の音楽を作っているのを見て、めちゃくちゃモチベーションになったし、アジア系のアーティストがこうやって活躍するのが「タブー」じゃないんだって知れるだけでもとっても嬉しかった。今となっては私たちみたいな人はたくさんいるし、人種や出身という壁よりも先のことが見えるようにはなったけど、「私みたいな見た目のアーティストがまたいるんだ」って知ることだけでも、ある意味安心するんだよね。 ―ビーバドゥービーの美的世界観やメイクのスタイルは、若いアジアの女の子たちに超人気だしね!あなたがロールモデルとなっているのはめちゃくちゃ最高だと思う。 Bea:確かにね!