上原、イチロー対決に完勝も「目を見なかった」
レッドソックスの上原浩治(40)とマーリンズのイチロー(41)の昨年9月2日以来の日本人対決が9日(現地時間8日)、フェンウェイパークで実現した。「9番・ライト」でスタメン出場したイチローと上原のマッチアップは、6-3で迎えた9回1死走者無しの場面で巡ってきた。
上原は、まず140キロのストレートをアウトコースに決めてカウントを取ると「サイン通り高めに」と、真ん中高めにストレートを続けた。 おそらくイチローは、そのストレートを狙っていたのだろうが、球威に押し込まれて、打球はポーンとショートとセンターの間付近に上がった。最後はセンターがキャッチして、上原の完勝。これで2人の対戦成績は、13打数2安打6三振となった。 「イチローさんを意識すると、どうしても、ボール、ボールとなってしまうんでね。なるべく意識しないように投げました。(意識しないために打席でイチローさんの)目も見ないようにしていたんです。見てしまうと意識してしまうので」
18.44メートルの空間を挟み、上原は、なんとイチローの目を見なかったという。 上原の深層心理に刷り込まれているイチローの凄さをふり払い、冷静に勝負するための手段なのだろう。いわゆる名前負けしないためのマネジメント術である。イチローには、メジャー初対決となった2009年6月11日に2安打を浴びて以来、6年間ヒットを打たれていない。 2人の卓越した技術と経験を考えると、2人の対決は心理戦に影響される部分が大きいが、「目を見ない」という無意識、無心のピッチング術が、イチローキラーとなっている秘訣のひとつなのかもしれない。 この日、イチローは、長いトンネルを抜けだしていた。4点を追う4回、2点を返し、なお一死一、二塁のチャンスに、詰まりながらもセンター前ヒットを記録。16試合35打席ぶりのヒットとなった。結果は残ったが、今季4勝9敗の右腕、ポーセロの148キロのストレートに押し込まれた打球で、まだ復調とは言えない打撃内容だった。試合後、イチローはコメントを残さなかった。 それでも、上原の2つ年上のレジェンド、イチローに対するリスペクトの気持ちは変わらない。「野手の42歳(10月で)はピッチャーの40歳とは違いますからね。打って走って投げないとならないんですから、凄いと思いますよ」 確かに10月で42歳になるイチローの34打席ヒットのないことがニュースになるのだから、そのこと自体が、変わらぬ存在感と期待感を示している。 イチローとの対戦を楽しみか?と聞かれた上原は、「楽しみですけど、楽しむためには、こういう競ったゲームではなく、大差の展開で投げさせてもらいたい」と、冗談交じりの本音をポロリ。9回を3人で締めた上原は、21セーブ目。9試合連続無失点を続けた。チームも4連勝で、4カード連続の勝ち越しとなり、借金を「4」に減らした。