【解説】東京電力 世界最大級の原発で核燃料装填開始 ~柏崎刈羽原発“再稼働”の意味
東京電力は柏崎刈羽原発7号機に核燃料を装塡(そうてん)する作業を開始した。東日本大震災以降、国内に33基ある原発は一旦全て停止したが、現時点で12基(2024年4月現在)が再稼働した。ただ、この先、柏崎刈羽原発が再稼働することになれば、単に”再稼働が一基増える”だけではない、別の意味がある。(経済部・岩田明彦)
■通称KK、世界最大級の原子力発電所とは
新潟県柏崎市と刈羽村にまたがる東京ドーム約90個分という広大な敷地に立地する、東京電力の柏崎刈羽原子力発電所。7つある原子炉の総出力は821万2千キロワットと、1つの原子力発電所としては世界最大級とされている。 発電される電力は約200キロ離れた東京を主とした首都圏に送電される。電力関係者によると、東日本大震災前までは東京電力管内の1割~2割の電力を賄う、まさに日本経済にとって重要な発電所であったという。しかし、震災後、柏崎刈羽原発の原子炉は1基も再稼働していない。 「KKの再稼働は東京電力の悲願です」(東京電力の関係者) 東京電力では、柏崎刈羽原発を通称KK(ケー・ケー)と呼ぶ。ちなみに福島第一原発は通称1F(イチエフ)。どちらも立地自治体のイニシャルを取ったものだ。2011年の福島での事故後、福島第一原発の6基はもちろん、第二原発の4基も全て廃炉にすることを決定した東電にとって、KKはまさに「虎の子」、再稼働は文字通りに悲願と言える。 ただ、2017年12月に6号機と7号機が新規制基準に合格し、早々にも再稼働するものと思われたが、そこからの紆余(うよ)曲折が長かった。2020年には、東電職員が他人のIDカードを利用して原発の中枢部である中央操作室に不正入室。その他、発電所構内への侵入感知器が複数故障していることを放置するなど、テロ対策上の重大な問題が相次いで明るみとなった。 事態を重く見た原子力規制委員会は事実上の「再稼働禁止命令」を出したが、その後も柏崎刈羽原発では3号機の老朽化対策の審査に他の号機のデータを流用したり、原発の火災防護などが記された書類を車の屋根に置いたまま走らせ紛失するといった不祥事が続いた。 その後、結局、原子力規制委員会は「東電に自律的改善が見込める状態になった」として、年の瀬も迫った去年12月27日に「再稼働禁止命令」を解除した。しかし「(東電に)いつ後ろから頭を殴られるか、疑心暗鬼になっている」と、原子力規制庁の幹部は裏で頭を抱えていた。命令解除はしたものの、今も東電に不信感を抱く関係者が多いのは間違いない。