【解説】東京電力 世界最大級の原発で核燃料装填開始 ~柏崎刈羽原発“再稼働”の意味
■”核燃料装荷”も再稼働は視界不明瞭
4月15日、東京電力は7号機で原子炉に核燃料を入れる「燃料装荷」という作業を開始した。今後2週間程度をかけて872体の核燃料を原子炉に入れる見込みだが、これは原子炉を再起動するための法律上の最終工程の一つとなる。残るはプラント全体のチェック後、いよいよ制御棒を引き抜き、原子炉を起動する。いわゆる再稼働だ。 ただ、実際に再稼働できるかどうかは別問題となる。原発の再稼働には地元自治体の同意が必要となるが、地元・新潟県も当然、東京電力に対して強い不信感を抱いている。 それに加えて、元日の能登半島地震も影響している。この地震で、新潟県も被災したわけだが、柏崎刈羽原発の周辺住民が事故時に使用する避難道路となる北陸自動車道は一時通行止めとなり、また国道8号線は避難先手前の上越市で土砂崩れが発生した。さらに津波警報を聞いた市民らが乗用車で避難したことから立地自治体の柏崎市では渋滞も発生した。 「地震で原発事故が起きた場合、本当に避難できるのか」、柏崎刈羽原発の周辺に住む住民からも当然懸念の声は増している。原発から5キロ圏内に住む住民は日本テレビの取材に、「再稼働するにしても(その前に)避難道路を整備してほしい」と、切実な思いを話している。 事実上、再稼働の是非を最終的に判断する新潟県の花角知事は、今ある避難計画をさらに充実させるため、国に避難道路の整備を要望する意向を示している。
■「東京の電気のために、なぜ苦労するのか」
柏崎刈羽原発特有の問題として、「立地エリアと電力が供給されるエリアの矛盾」がある。つまり、柏崎刈羽原発で発電された電気は新潟から遠い首都圏に送られ、東京電力ユーザーのメリットとなる。しかし新潟県は東北電力管内であり、東京電力の原発が再稼働したところで電気料金の値下げのメリットは無い。この立地エリアと供給先エリアの矛盾が生じているのは国内でも柏崎刈羽原発だけで、他の原発は立地と供給エリアは同じとなっている。(補足:東日本大震災以前は、福島第一原発と第二原発も同様の矛盾があった) 「東京の電気のために、万が一の事故の際、避難で苦労するのは理不尽だ」。原発の地元ではこう言った声を耳にする。以前は日本経済を支える一大発電地域としての誇りを持っていたと言うが、今は複雑な心境があるのだ。 新潟県はリスクを負うが、その見返りとなる電力は東京電力から基本的に供給されていないことから、地元住民にとっては再稼働によるメリットは見えにくい。こういった特殊条件も、再稼働の判断に影響すると見られている。