残酷KOショーとなったメイウェザー対天心は無謀なマッチメイクだったのか?
メイウェザーは質問を受け付けなかった
会場入りは予定より1時間遅れた。銀座で一日買い物をしてヴェルサーチで服を揃えた。叙々苑で焼肉を食べ、富士山を見に行こうとした。さすがに運営サイドが「試合に間に合わない」と止めたが、総勢、約50人でやってきたメイウェザー一行は観光気分だった。 到着が遅れたため天心のテーピングチェックにメイウェザーのスタッフが間に合わず一から巻き直させた。控え室にはチキンとアイスクリームを用意させ、一切、ウォーミングアップもしなかったという。「3ラウンドなら寝ていても戦える」の豪語は嘘ではなかった。 試合後、すぐにプライベートジェットに乗って帰国、米国でのカウントダウンに間に合わせたいと希望していたメイウェザーだが、「メディアに敬意を示したかった」と、会見をキャンセルせずにインタビュールームにやってきた。 再び日本のファンや関係者へ感謝を述べ「天心は素晴らしい若きライオン。まだまだ成長する。この試合の負けは記録には残らない。コンタクトスポーツなのでいいときもあれば悪いときもある。これからも一生懸命頑張って欲しい」と天心へエールを送った。一方的に長々と話を続けている最中に時刻は午前0時を越えた。 テレビ画面でそれを確認すると「ハッピーニューイヤー」と新年を告げた。 「今年はポジティブでエネルギーに満ちた愛のある1年であるように願う」 メイウェザーは「新年だから質問は受け付けない」と、一切の質問を拒否すると、再び一人語り。 「私は引退した人間。カムバックするつもりはない」 6階級王者のマニー・パッキャオとの再戦や、メイウェザーがTKOしたコナー・マクレガーをUFCで倒したヌルマゴメドフとのボクシングマッチなどが噂されているが、改めて非公式なエキシビションゆえ上がったリングであり正式な現役復帰はないと否定した。 天心は見るも無残に倒されたが、前日の計量時点で4.6キロ差。当日のメイウェザーの焼き肉分の増量を考慮すると、おそらく6キロ以上の体重差はあった。 2階級分だ。そして2オンスしか違わなかったグローブハンディ。残酷なKOショーになるのも無理はなかった。こういう事態を避けるためにボクシングには階級制度が導入されているのである。 「体重差は向かい合ってみてわかった。動くタイプの僕を潰しにきた。前へ前へ体格差を生かしてきた」 天心の素直な感想。 「凄い体重差がでた試合かなと思った。10キロ差はでかいと思いました」 ベラトールの現役王者をフロントチョークでタップさせた堀口恭司も、この試合の感想を聞かれて、体重差の問題を指摘した。 すでに世界ランカークラスとも言われる優れたボクシング技術を持つ天才キックボクサーが、大人と子供の試合みたいにダウンを続けた。 エキシビションとはいえ、あまりに公平性から逸脱した体重差やグローブハンディなどに問題はなかったのか。 会見で榊原信行実行委員長は独自の理論を展開させた。 「無謀と海外のメディアには酷評されるかもしれないが、新しい冒険に天心が踏み出してくれた。競技をやる気はまったくない。競技化していくとつまんないものになる。天心もリスクをとった。まったく安全性に意識がないわけではなく、無謀なチャレンジになるギリギリを攻めた。もっとオンスの大きいグローブをメイウェザーがはめるべきだったかとも思うが、こういう結果も含めて、リスクを恐れずチャレンジしたということ」