長嶋氏効果で立教大が59年ぶりの日本一!世代を越えた変わらぬ魂がそこに
エール交換の後に校歌が流れた。 神宮球場の貴賓室にいた“ミスター”長嶋茂雄氏も懐かしいその曲を口ずさんだという。 「嬉しかったね。投打に渡って非常にいい形で戦った。学生野球をやった人間としては、そこに戻ったような気持ちになった。応援も一生懸命だったし、僕も一緒に歌ったりしました」 11日、立教大が1958年以来、59年ぶり4回目となる全日本大学野球選手権の頂点に立った。国際武道大との決勝スコアは9-2。1957、1958年と立教大は連覇しているが、1957年のチームの4番が長嶋氏だった。 いきなり1点を追うことになった初回に山根の逆転タイムリーに続き、一死一、二塁から追撃の3ラン本塁打をレフトスタンド中段に放った大東は、「小学校の時から本とかで読んで、本当に偉大な方で長嶋さんに憧れて立教に入って、その長嶋さんの前で打てたということは奇跡というか、素晴らしいことだと思います」と言った。その一打を長嶋氏も「大東くんがレフトへ打ったあの打球は、プロ野球で見るようなバッティングでした。ちょっと、学生野球ではないくらい。素晴らしかったと思います」と絶賛した。 決勝戦まで得点力に欠けた打線だったが、この日はその後も追加点を重ねた。そして5-2で迎えた5回、一死一、二塁からロングリリーフに立った184cmと長身の1年生アンダースロー中川がピンチを脱し、最後まで無失点でゲームを締めた。 長嶋氏は「(中川は)非常にいいピッチャーだった。ボールは速くないけど、コントロールがいいし、うまくコースへ投げていました。そういうピッチングが相手打線に的を絞らせなかったと思います」とまた賛辞を送った。中川も、「すごく偉大な先輩で、今日来てくださっているということで少し緊張した部分もあったけど、自分を含めて先輩はそれが後押しになって優勝できたと思う」と、敬意を表した。 就任4年目の溝口監督が5度、胴上げされた。 「リーグ戦ですら18年間勝てなかった。春の舞台は50年以上昔に出場したことなので一つの壁を越えたというと言い過ぎだけど、越えられなかった壁に何とか足を掛けたり越えかかるとこまできたかなと思う。簡単に勝てるとは全く思っていなかったし、厳しい戦いを想定してチーム作りをしてきた。厳しい戦いをした中で勝てた。喜びが増しているというか、やってきたことが間違いではないんだなと感じている」 指揮官に涙はなかった。 キャプテンの熊谷も「ずっと59年ぶりというものがついてきた。正直やりにくさはあった。でも、59年ぶりに優勝できたことで立教大の歴史に残せたのは自信になるし、誇りを持っていいことだと思う。でも、そこで慢心しているとリーグ戦で足元をすくわれる。今は喜んでいいけど、この会見が終わったら切り替えたい」と、『59年ぶり』の呪縛を解いた安堵感に包まれていた。 長嶋氏の1年後輩で2連覇した時代の正捕手で、のちに中日、ヤクルトでプレー、ヤクルトでは長年スカウト部長を務めた片岡宏雄さんは、59年前の優勝メンバーの一人だ。 「国際武道大は、打倒東京6大学で燃えていたんだと思うが、それが逆に気負いとなって、一回に点を取られたのではないか。長嶋さんが顔を見せ、その長嶋さんのオーラが打たせた。立教の伝統の力が勝たせた勝利」と、後輩の勝利を喜んだ。 OBの指摘する“長嶋効果”に溝口監督も、「今朝、いらっしゃると聞いて勝てたらいいな、と思ってやっていました。実際にいい試合をお見せすることができてよかったですし、正直ほっとしている部分もあります」と言う。 熊谷も「本当にプロ野球界を代表するというか、レジェンド的な人が見に来てくれて勝つことができたのは嬉しいことだし、優勝という形がついてきたのでよかったと思う」とミスターへの感謝を続けた。