中高年の観客で大賑わい…『劇場版ドクターX』がもたらす稀有な贅沢とは? “お仕事ドラマ”としての魅力を解説&評価レビュー
2012年から放送されたドラマ『ドクターX ~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系)シリーズの完結編が、『劇場版ドクターX』として公開中だ。今回は、米倉涼子演じる大門未知子の過去が明かされる本作について、見どころを解説する。(文・小林久乃)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
とびきりの贅沢が詰まった128分
2012年から連続ドラマとして放送スタートとなった『ドクターX~外科医・大門未知子~』。フリーランスの名外科医・大門未知子(米倉涼子)が 「私、失敗しないので」 という決め台詞とともに、次々に患者を救う物語だ。言うなれば女性版・水戸黄門というところだろうか。患者がどんな窮地に立たされたとしても、悪を退治して、命を助ける医師。それが大門だ。 放送から12年、『劇場版ドクターX FINAL』として終焉を迎える。12月6日の公開からたった3日間で、観客動員44万1421人、興行収入6億387万8700円(12月6日~8日、興行通信社調べ)という記録から、往年の作品ファンが多いことを伺える。 私たちが鑑賞をする128分間には、どんな物語が詰まっているのだろうか。期待しながら劇場へ向かうと、そこには とびきりの贅沢が詰まっていた。
米倉涼子の名演の裏に隠された葛藤
まず贅沢として挙げたいのは、米倉涼子の圧倒的な迫力美を大画面で拝めることである。これはテレビ画面(自宅にホームシアターでもあったら話しは別ですが)と全く違った。すらっとした無駄のない四肢に「私、服には負けないので」とでも言いそうな、インパクトのある衣装。最近の映像では強い女性像を現すアイテムとなった、ハイヒールを履いて、ヒール音を鳴らす。幾度も登場するシーンだが、つい見惚れる。一寸の乱れもない美しさとはこういうものだと、大門、いや米倉が証明している。 米倉といえば最近、自身が『脳脊髄液減少症(のうせきずいえきげんしょうしょう) 』という難病に襲われたことを、公表している。寛解状態が続き、完治ということはないそう。彼女は病を抱えて臨んだ映画撮影だ。この理由を辿ると、存在に迫力が増すことがわかる。決死の覚悟だったのだ。 できることなら米倉涼子は 大門未知子に、自分の身を委ねたかったんだろうと想像をするとグッとくる。