【大人の群馬旅】9月まで楽しめる「ブルーベリー摘み」大粒の実は味わいも濃厚!
豊かな風土に彩られた日本には、独自の「地方カルチャー」が存在。そんな“ローカルトレジャー”を、クリエイティブ・ディレクターの樺澤貴子が探す本連載。今回の旅先は、近年アートの街としても注目が集まる群馬県前橋市。赤城山の南麓の緩やかな尾根で育まれた自然の恵みがここに 【大人の群馬旅】新星ワイン、ブルーベリー、天然氷(写真)
《BUY》「はなぶさ有機農園(小坂子園)」 父娘のブルーベリー、瑞々しい“夏”を摘みに
かんじんなことは目に見えないんだよ──とは、サン=テグジュペリ作『星の王子さま』であまりにも有名なフレーズである。私たちは巷に溢れる“オーガニック”という言葉に対して、あまりにも無頓着になりすぎてはいないだろうか。爽やかな酸味と奥深い甘みが口いっぱいに広がる、大粒のブルーベリーを口に含みながら、キツネが王子さまに説き伏せた件の一節が頭をよぎった。この実を宿すまでに、いったいどれほどの手塩にかけられているのだろうか。
「はなぶさ有機農園」の物語のプロローグは2001年へと遡る。「かつて観光地として賑わいをみせた赤城山に再び光が灯るように、ブルーベリーを呼び水としてとして地元に貢献したい」という願いを込め、この地で事業を営んでいた故・林 明秀さんが開園。小坂子園と嶺園の2箇所を合わせて1haの敷地に、900本約20品種にも及ぶブルーベリーを植樹。訪れる人ができる限り長く収穫時期を楽しめるように、小坂子園では早生の品種を主流に6月~7月下旬、嶺園では7月下旬~9月まで晩生のブルーベリー摘みを堪能することができる。
現在、農園を切り盛りするのは6年前に亡き父の意志を受け継いだ林 伴子さんだ。 「それまでは音楽関係の仕事に携わっていたため、畑に足を運ぶことはありませんでした。自らブルーベリーと向き合うようになって、初めて“父なら、こんな時にどうしただろう”と空の父とたくさん話をします」と語る。 大粒で良質な実をつけるためには、果てしない時間を費やし余分な実を手作業で摘み落とさなければならない。また、木の負担を軽減するために、冬の剪定作業も欠かせない工程。その枝をチップ状にして木の根もとに敷き詰めることで、土がフカフカに保湿されて根の生育に役立つという。「こんな気の遠くなるような作業を、父はひとりでやっていた」と、林さんは在りし日の父親の姿を手繰り寄せる。