「変わり続ける老舗」 220周年を迎えたミツカンの変革と挑戦
「やがて、いのちに変わるもの。」というミッション
ミツカンのミッションである「やがて、いのちに変わるもの。」は、ただの商品ではなく生活に密接に関わる食品を製造する企業としての責任と使命を表している。 戦争によって工場が一部焼失し、戦地から帰ってくる社員の雇用を確保しなければならない状況の中でも、品質は維持したいという強い意志を持っていた7代目は非常に厳しい経営状況に直面していた。さらに戦後の食糧不足で酒粕の調達が困難になったにもかかわらず、ミツカンはお客様に安心安全な商品を届けるため、闇市には一切頼らず正規のルートからのみ仕入れを行ったそうだ。困難な時期でも高品質の製品を適正価格で提供し続け、その結果多くの顧客に支持された。 ミツカンは1968年に「100%醸造酢はミツカン酢だけ」、「この子には、まじりけのないものを与えたい!」のキャッチフレーズで新聞広告などを展開する純正食品キャンペーンを開始した。そこには添加物をできるだけ使わずに子供にも赤ちゃんにも食べさせられる安心安全なものをお届けしたいという思いがあった。食の品質問題が多発した2000年代初には純正食品キャンペーンをさらにもう一歩進めたいということで「やがて、いのちに変わるもの。」というグループビジョン・スローガンが誕生した。 グローバル展開が進んでいるミツカンだが、この理念は言語や文化の壁を超えて海外の社員にも共有され浸透している。 ◾️現地生産を基本とするグローバル戦略 ミツカンはアメリカやイギリスにおいても商品を展開している。商品は基本的に現地で生産を行なっている。コカ・コーラの製品が製造場所によって味が異なるように、ミツカンの商品も製造場所によって味が異なるという。それは国によって好みが異なるため、あえて異なる味になるように製造されているという。例えば、アメリカではパスタソース、イギリスではビールの原料となるモルトを使ったお酢など、各国によって異なる需要を理解し各地域で愛される商品を生産しブランドの信頼を築いているそうだ。現地の方に根強く愛されるもの、そういうブランドを大事にしていると中埜氏は語った。 アメリカやヨーロッパでも生産拠点があるということと販売網があることを強みに、それをうまく生かしつつ中期での成長戦略は3つあるという。 1. 創業のお酢をもう一度見直すこと。 2. 自然と素材の力を最大限に生かしながら美味しくて健康的な食を作ること。 3. 世界中で日本食や日本的フレーバーが成長していることから、和のエッセンス(日本食)を取り入れた新しい食を届けること。