“宇野ヘディング”事件の真相 なぜか広島主砲から漏れた安堵…本塁打王に刻まれた記憶
山本浩二から感謝「俺も当たってなぁ。かっこ悪くてよぉ」
「星野さんがグラブを叩きつけたのは後から映像で見た。その時は知らなかったよ。でも怒っていたのはわかった。ベンチの中を撮ろうとするカメラマンに向かって水をパーってまいていたしね。俺は覚えていないけど、あの時は星野さんにすみませんって言ったんだろうね。でも、その後もベンチで俺は星野さんの横にずーっと座っていたような気がするけどね」。試合後、そんな怒りの先輩投手から食事に誘われたという。 「星野さんが逆に俺に気を使ったんだろうね。その時はウチの兄貴が来ていたから行けなかったんだけどね」。後日、名古屋で食事に出掛けることになった際、宇野氏は星野氏のベンツに追突した。「ナゴヤ球場を出てから、最初の信号くらいのところだったけどね。追突といってもコツンって感じだよ。直すような傷も全然入っていなかった。そのまま食事にも行った。翌日、球場で会った時に『ああ、首が痛いなぁ』って冗談で言われたけどね」。 宇野氏の“ヘディング守備”はテレビの珍プレー番組を確立させるきっかけにもなった。「みのもんたさんは、あのナレーションでどんどん出るようになったもんね。潤ったよねぇ、きっと。だって、あれからだもんね。ああいう番組ができたのは。視聴率もとれて、まして世間もバブルだったしねぇ」と、ちょっと複雑な表情で話した。 2024年9月8日のヤクルト対阪神戦(神宮)で阪神・佐藤輝明内野手が三塁フライを“ヘディングエラー”したが、宇野氏は「そんなことあったの」と言いながら「でもさぁ、あれって山本浩二さんもやっていたんだよね。俺と同じ年にね」。ダイヤモンドグラブ賞(現ゴールデングラブ賞)10度の名手、広島・山本浩二外野手は宇野氏より約4か月前の1981年4月19日の巨人戦(後楽園)のセンター守備で打球を頭に当てていた。 「浩二さんにどこだったかで言われたことがあるんだよ。『よかったぁ、お前がいてくれて。俺も当たってなぁ。かっこ悪くてよぉ』ってね。浩二さんもまともに当たっていたけど、俺ので全然かき消されていたもんね」。あれから40年以上の月日が流れても、世代を超えて宇野氏の“ヘディング守備”は知られている。もちろん、1984年に本塁打王に輝くなど実績も人気もあった選手だからこそ語り継がれているのは言うまでもない。
山口真司 / Shinji Yamaguchi