雨の中、屋外に布団敷いて野宿!? 中国・コロナ研究者の抗議の姿に同情の声…「研究室を突然閉鎖された!」
屋外に布団を敷いて寝起きする著名なウイルス研究者の姿が、中国のソーシャルメディアで話題になった。実はこの研究者は、新型コロナウイルスのゲノム情報を初めて世界に公開した人物だ。国際的にもスター級とされるこの人が、野宿同然で寝る姿には市民の同情が寄せられ、海外からも何が起きたのかと注目を集めた。 【動画を見る】雨の中、屋外に布団を敷いて野宿する張氏の抗議行動の映像。
新型コロナ解明の救世主 国際的にも高い評価
話題の人物は、福建大学上海公衆衛生臨床センター(SPHCC)に研究室を持つ、張永振氏だ。2020年、張氏はオーストラリアのウイルス学者、エドワード・ホームズ氏とともに、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のゲノム配列を世界に公開。これが、ワクチンの迅速な開発を可能にした重要な要因の一つであると、広く評価されている。 学術雑誌ネイチャーによれば、これまで張氏は国際的な称賛を受けている。2020年には、ネイチャーが科学界の重要な発展を支えた人物をリスト化する『今年の10人』にも選出された。
研究室が閉鎖!抗議の姿がソーシャルメディアで拡散
ところが4月28日に、張氏は突然自分の研究室が閉鎖されたことを知った。研究室へのアクセスを断たれたことに抗議し、張氏は研究室の外で寝ることにしたという。指導する学生が投稿したとされるソーシャルメディアの映像には、雨の中、布団を被って外で寝る張氏の様子が写っている。 ネイチャー紙によれば、研究室閉鎖は改修計画のためで、張氏のチームには別のラボを用意したとSPHCCは説明していたという。しかし、張氏のソーシャルメディアへの投稿(後日削除されている)によると、SPHCCは研究チームが必要なバイオセーフティー条件を揃えていないラボに移るよう指示。これを受け入れるわけにはいかず、張氏が抗議行動に出たということだ。
中国ネット民も涙…当局のお仕置きを疑う声も
サウスチャイナ・モーニング・ポスト紙によると、研究室の前で野宿同然で眠る張氏の姿は、中国のネット民からの同情を集め、微博(ウェイボー)の検索トップにも上がったという。同時に、著名な研究者に対する中国政府の扱いにも疑問の声が出たという。 欧米メディアも、今回の事件に注目。研究室の閉鎖移転には、張氏を学術界から締め出す意図があったという見方がある。実は、2020年のゲノム配列の発表にあたり、張氏は武漢の患者のデータを使用していたが、中国政府の許可を得ていなかった。これが当局を怒らせた理由と見るメディアも多いが、真相は謎に包まれたままだ。 結局5月1日に、SPHCCと暫定合意に達し、張氏のチームは研究室にしばらくの間戻れることになった。しかし、今後どこに研究室を移すのか、学生たちと公衆衛生臨床センターとの共同研究は続けられるのかといった問題については、答えは出ていない。
文:山川真智子