【大学トレンド】文系でも必要な「データサイエンス」の学び 大学でどんな授業をしているの?
データサイエンスには人を動かす力がある
経済学部4年の山本拓実さんは、2年次から副専攻でデータサイエンスを学んでいます。1年次に経済学の理論を学ぶ中で、ニュースなどで見聞きする現実と、それらの理論との間にギャップを感じたことが、データサイエンスを学ぶきっかけになりました。 「あやふやな事象をデータや数字を使ってはっきりさせたいとの思いから、データサイエンスを学び始めました。学んでいくうちに、物事の背景を追求する楽しさを知りましたし、データをもとに見つけた情報をうまく使ってロジカルに物事を考え伝えることができれば、人は納得して動いてくれます。データサイエンスには人を動かす力があると思い、どんどん興味を持つようになりました」(山本さん) 統計学やデータサイエンスの基礎を学ぶところから始め、プログラミングやデータ構造などの学びへと段階的に深める中で、特に印象的だったのが日本IBMとの産学連携科目の授業でした。 「この授業を通してデータサイエンスの『Why』『What』『How』をすべて学べたのがとても良かったです。特に『How』の部分では、グループワークを通して実務に近い形で課題解決に取り組むことで、データサイエンスを実際に活用するイメージができ、身近に感じることができました。文系の僕でもデータサイエンスを使ってできることがあると実感できたことは、非常に大きかったです」(山本さん)
客観的に見る力と、論理立てて考える力
データサイエンスを学んだことで、情報処理能力や物事を客観的に見る力が身につき、知的好奇心も豊かになったと山本さんは言います。 「膨大なデータの中から自分の問いに対して必要な情報だけをつかみ取り、それをどのように使えば自分がやりたいことを実現できるのかを考える力は、さまざまなシーンで役立つ能力だと思います。データを読み解くというのは、物事を主観や単純な因果関係だけで見るのではなく、さまざまな角度から見る作業になるので、論理立てて考える力にもなっています。データサイエンスは連鎖的に考えていくところがあるので、学びに終わりがないのも魅力的でした。知的好奇心が次から次へとかき立てられていく感覚があります」 24年4月からは外資系IT企業のプリセールス(技術営業)職として働き始める山本さんは、こうして身につけた力をどのように生かしたいと考えているのでしょうか。 「僕自身は社会やビジネスとITの間にあるギャップを埋められる存在になっていきたいと考えています。なぜデータを活用すべきなのか、どんなデータを収集すべきなのか、そしてそれらをどう生かしていくべきなのかまでは、まだ考え尽くされていません。環境や能力にかかわらず、すべての人々がテクノロジーの恩恵を受けられる社会にしていきたいです」 文部科学省が奨励する「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」の後押しもあり、データサイエンスを学べる大学が増えています。筑波大学や上智大学のように全学部でデータサイエンスの基礎科目を必修化する大学や、学習院大学や亜細亜大学のように副専攻としてデータサイエンスをより深く学べるカリキュラムを用意する大学もあります。 今後、データサイエンスの学びは、学部や分野を超えてますます広がっていくことが考えられます。文系・理系にかかわらず、プラスアルファの力としてデータサイエンスを学ぶことは、大きな強みになるはずです。
朝日新聞 Thinkキャンパス