安楽死は保険適用で無料、議論進む国の驚きの現実 家庭医が寄り添い可否を見極める 安楽死「先駆」の国オランダ(2)
「助けてください、安楽死で。もう準備はできています」
心身の絶望的な苦しみが伝わった。その後、何度も質問を繰り返したが、意志に揺れはない。回答は明確で、訴えに共感もできる。デ・ヨングは「尊厳を保ちながら別れを告げる準備ができたのだ」と確信した。
ただ、余命が推察できる病と異なり、先の見えない難病や認知症などは、安楽死を行う時期の見極めが難しく、医師に判断が委ねられるケースが少なくない。デ・ヨングは「心理的負担、孤独を感じる」と吐露する。
■究極的な手段
デ・ヨング自身、将来の終末期を見据えた多くの患者から「安楽死を実施してくれるのか」と問われる。実際に安楽死を行うのは年1、2回。看取る患者の一握りにすぎない。「安楽死制度は、患者に安らぎを与えるもの。やってくれる医師がいるとわかるだけで安心するんです」
医師である以上、患者を治療し、命を救いたい。けれど、それがかなわないときもある。「希望する人がいて、それが患者の助けになるのなら」。究極的な手段としての意義を理解し、葛藤をかみしめつつ日々向き合っている。=敬称略(池田祥子、小川恵理子)