出発駅で感じる「旅情」の高まり! 旅の醍醐味は計画段階から始まるものだ
次の旅が生む日常への活力
旅立ちの日が旅の“クライマックス”なら、実際に旅が始まると、道中で楽しい経験をしながらも、次第に解放感は薄れ、帰宅後の日常が頭をよぎるようになる。旅が後半に差し掛かると、仕事のメールを確認したり、返信をしたりしなければならない場面も出てくるだろう。 そして、旅の終わりがやってくる。帰りの飛行機や列車で感じる喪失感は、現実に引き戻されることから来るもので、まるで日曜夕方の 「サザエさん症候群」 のような感情の落ち込みに似ている。その喪失感を乗り越え、次の旅の計画を立て始める。手段が目的化してしまっていても、キャリーケースが再び使われる日を楽しみにし、キャリーケースを転がしながら歩く日を夢見て、旅立ちの日を待つことで日常に張り合いが生まれ、仕事のモチベーションにもつながる。子どもの頃、 「家に帰るまでが遠足」 といわれていたが、現代人にとっては、旅行の計画や出発前の準備、そして期待感そのものが旅情を感じさせ、出発当日までの期間こそが“旅行”そのものであるといえる。そして、この旅情は、次の旅に向けた終わりのない“予告編”となり、心を躍らせ続ける。 旅行には現実逃避の側面もあるが、それと同時に自分を取り戻し、日常から解放されることで味わう旅情や、次の旅を計画することで日々に活力を与えるという再帰的な側面があることを、改めて考え直す価値があるだろう。
仲田しんじ(研究論文ウォッチャー)