マイナ保険証の利用促進を解説!従来の保険証は2024年末に廃止が決定。6月からの医療費改定でどうなる?
マイナ保険証の利用率はどのくらい?
厚生労働省「マイナ保険証の利用促進等について」を参照すると、2024年5月時点で利用率は7.73%でした。なお、マイナ保険証の利用件数は約1425万件です。 続いて病院・医科診療所・歯科診療所・薬局など施設類型別のマイナ保険証利用率を確認していきます。 2024年3月時点では、病院が14.83%と最も高く、歯科診療所が6.47%と最も低い数値で推移しているのが現状です。 また、2024年4月時点で薬局が最も低い数値で推移していたものの、2024年5月時点では7.40%と右肩上がりで利用率を伸ばしています。 ただし、全体的に利用率が高いとは言えない状況にあるため、政府は利用率を押し上げるためのインセンティブを設けました。 利用人数の増加に応じて異なりますが、診療所と薬局で最大20万円、病院で最大40万円の一時金を支援しています。 次に2024年度に施行された診療報酬改定の概要を確認していきます。
【2024年度】診療報酬改定で医療費はどうなる?
今回は基本方針と主な改定項目に分けて解説します。 ●診療報酬改定の基本方針 厚生労働省は、診療報酬改定について以下の基本方針を掲げています。 ・物価高騰・賃金上昇、経営の状況、人材確保の必要性、患者負担・保険料負担の影響を踏まえた対応 ・地域包括ケアシステムの深化・推進や医療DXを含めた医療機能の分化・強化、連携の推進 ・安心・安全で質の高い医療の推進 ・効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上 上記の基本方針に対して、それぞれ具体的な方向性が資料では示されています。 例えば、高齢化が進行し、医療に関する需要が高まることが予想されているため、医療従事者の人材確保や賃上げに向けた取り組みなどが掲げられています。 ●診療報酬改定の主な改定項目 2024年度の診療報酬改定の主な内容は以下の通りです。 ・賃上げ・基本料等の引き上げ ・医療DXの推進 ・ポストコロナにおける感染症対策の推進 ・同時報酬改定における対応 ・外来医療の機能分化・強化等 ・医療機能に応じた入院医療の評価 ・質の高い訪問診療・訪問看護の確保 ・重点的な分野における対応 ・個別改定項目/医療資源の少ない地域への対応 今回の改定で注目したいのが「賃上げ・基本料等の引き上げ」です。 標準的な感染防止対策を実施する必要があり、医療従事者の賃金が引き上げられることになりました。これにより、改定後の初再診料や入院基本料などが見直されます。 具体的に見直される項目やポイントについては、次の章で紹介していきます。 ●【初再診料等の見直し】現行と改定後を比較 現行と改定後を比較して全体的に2~3ポイント引き上げられたことが確認できます。 【初診料の現行】 ・初診料:288点 ・情報通信機器を用いた初診料:251点 ・初診料の注2・注3・注4:214点 ・情報通信機器を用いた場合:186点 ・初診料の注5:144点 ・情報通信機器を用いた場合:125点 ・注2~4に規定する場合:107点 ・情報通信機器を用いた場合:93点 【初診料の改定後】 ・初診料:291点 ・情報通信機器を用いた初診料:253点 ・初診料の注2・注3・注4:216点 ・情報通信機器を用いた場合:188点 ・初診料の注5:146点 ・情報通信機器を用いた場合:127点 ・注2~4に規定する場合:108点 ・情報通信機器を用いた場合:94点 【再診料の現行】 ・再診料:73点 ・情報通信機器を用いた再診料:73点 ・再診料の注2:54点 ・再診料の注3:37点 ・再診料の注2に規定する場合:27点 【再診料の改定後】 ・再診料:75点 ・情報通信機器を用いた再診料:75点 ・再診料の注2:55点 ・再診料の注3:38点 ・再診料の注2に規定する場合:28点 【外来診療料の現行】 ・外来診療料:74点 ・情報通信機器を用いた外来診療料:73点 ・外来診療料の注2・注3・注4:55点 ・外来診療料の注5:37点 ・注2~4に規定する場合:27点 【外来診療料の改定後】 ・外来診療料:76点 ・情報通信機器を用いた外来診療料:75点 ・外来診療料の注2・注3・注4:56点 ・外来診療料の注5:38点 ・注2~4に規定する場合:28点 次に入院基本料などを見ていきましょう。 ●【入院基本料等の見直し】現行と改定後を比較 入院基本料等は、初再診料等に比べて大幅な見直しが行われています。 医療従事者の賃金アップは期待できるものの、利用者の自己負担額は増えることが予想されます。 【一般病棟入院基本料の現行】 ・急性期一般入院料1:1650点 【一般病棟入院基本料の改定後】 ・急性期一般入院料1:1688点 【療養病棟入院基本料の現行】 ・療養病棟入院料1入院料G:968点 【療養病棟入院基本料の改定後】 ・療養病棟入院料1入院料25:983点 【精神病棟入院基本料の現行】 ・15対1入院基本料:830点 【精神病棟入院基本料の改定後】 ・15対1入院基本料:844点 【特定機能病院入院基本料の現行】 ・7対1入院基本料(一般病棟の場合):1718点 【特定機能病院入院基本料の改定後】 ・7対1入院基本料(一般病棟の場合):1822点 【回復期リハビリテーション病棟入院料の現行】 ・回復期リハビリテーション病棟入院料4:1841点 【回復期リハビリテーション病棟入院料の改定後】 ・回復期リハビリテーション病棟入院料4:1859点 【地域包括ケア病棟入院料の現行】 ・地域包括ケア病棟入院料1:2809点 【地域包括ケア病棟入院料の改定後】 ・地域包括ケア病棟入院料1:2838点 一方で、マイナ保険証による業務効率の改善や医療従事者の賃金アップによる人手不足が解消されるのであれば、より高品質な医療サービスの提供につながるといった見方もできるでしょう。