城、鉄道遺産、古戦場、信仰の島……歴史をたどる琵琶湖一周の鉄道旅
弁天様を祀る神秘的な竹生(ちくぶ)島へ
長浜市内のホテルに泊まり、翌日は長浜駅から北陸線を北上。車窓には稲田が広がり、右手には日本百名山の一つ、伊吹山が眺められる。木ノ本駅で路線バスに乗り継ぎ、賤ヶ岳(しずがたけ)リフトで山頂へ。賤ヶ岳といえば、本能寺の変の後、羽柴(豊臣)秀吉と柴田勝家とが激戦を繰り広げた古戦場だ。戦乱の世がしのばれる。景観も素晴らしく、奥琵琶湖と余呉(よご)湖を一望できた。 木ノ本駅から再び北陸線に乗車。余呉駅からその先のトンネルまで、賤ヶ岳山頂から眺めた余呉湖が左手に広がる。トンネルを抜け、近江塩津駅で湖西線に乗り換える。湖西線は今年7月に開通50周年を迎えた。ほとんどが高架化されているので、眺望がよいのが特徴だ。 琵琶湖が見えてきたら近江今津駅に到着。徒歩5分の今津港から竹生島行きの船に乗った。琵琶湖に浮かぶ竹生島は、江の島(神奈川)、宮島(広島)と並び、「日本三弁才天」に数えられる。島内には、宝厳寺(ほうごんじ) と都久夫須麻(つくぶすま)神社がある。老松(ろうしょう)、老杉(ろうさん)が茂り、厳かな雰囲気が漂っていた。 今津港に戻り、近くの今津ヴォーリズ資料館のカフェでひと休みしてから再び湖西線に乗る。近江高島駅や志賀駅の付近は、車窓から琵琶湖が間近に見られる絶景のクライマックス。比良(ひら)駅で途中下車し、日帰り温泉の「比良とぴあ」で旅の疲れを癒やす。戦国から明治にかけての壮大な歴史絵巻に、ひとり思いをはせた。 文/荒井浩幸 写真/宮川 透ほか ※月刊「旅行読売」2024年11月号の特集「初めての鉄道ひとり旅」より