城、鉄道遺産、古戦場、信仰の島……歴史をたどる琵琶湖一周の鉄道旅
東海道線-北陸線-湖西線
滋賀県の面積の約6分の1を占める琵琶湖は、湖の東西南北でそれぞれ風景や風土が異なり、変化に富んでいる。そこで、沿線の歴史を探訪する琵琶湖一周の鉄道の旅に出た。 京都―米原駅間の東海道線と、米原―長浜駅間の北陸線の愛称は、ずばり「琵琶湖線」。今回は反時計回りで一周するため、進行方向左側の席に座る。大津駅を過ぎると、ところどころで遠くに琵琶湖を望む。 まずは安土(あづち)駅で下車。織田信長が安土城を築いた地だ。安土城跡は現地への往復と、天主跡まで上るのに時間を要するので、今回は原寸大の復元天主の模型と、VR(バーチャルリアリティー)安土城シアターで安土城を実感しようと、「安土城天主 信長の館」に立ち寄った。きらびやかな天主の様子に息をのんだ。 【写真】近江今津駅から徒歩5分、今津港前のひょうたん亭の人気メニュー、周航そば
米原駅で北陸線に乗り換え、長浜駅へ。長浜は時代ごとに三つの顔を持っている。戦国時代には豊臣秀吉が長浜城を築き、城下町を開いた。江戸時代は北国(ほっこく)街道の宿場町、琵琶湖の湖上交通の要衝としてにぎわった。明治に入るといち早く鉄道を誘致し、発展した。それらの歴史は、長浜城歴史博物館や、通称「黒壁スクエア」を中心とした古い町並み、長浜鉄道スクエアなどを巡って知ることができる。 「長浜城は江戸初期に廃城となりましたが、秀吉が整備した碁盤の目状の町並みは、基本的に今も残っています」と長浜観光協会の中川岳人さんが話す。黒壁スクエアの黒壁一號(ごう)館では、ガラス工芸品やオルゴールなどを展示・販売。黒塗りの堅牢な建物は、元は銀行だったといい、長浜の人々が当時、いかに最先端のものを求めていたかがうかがえる。 旧北陸線の開通にまつわる物語も興味深い。明治初め、政府が琵琶湖と敦賀をつなぐ鉄道建設を決めると、真っ先に駅の誘致に動いたのが、長浜の商人たちだったという。トンネルの難工事のため一部区間を除き、1882年に長浜―敦賀駅間が開業。同年に完成した旧長浜駅舎鉄道記念物に指定され、現在は長浜鉄道スクエアで見学できる。