「売り物にならん」から始まった、漆塗りの高級トイレ 借金3億円、血みどろのレッドオーシャンからの脱出
◆「しなければならない」の呪縛を解き放て
――2019年に事業を承継したとき、3億円の借金があったそうですが、どうなりましたか。 実は、2024年7月で完済します。 これでやっと事業承継が完了し、先代社長の父と母を本当の意味で楽にさせてあげられると思っています。 ――さかもとは創業80年以上です。会社を潰せないというプレッシャーはありますか? あまりプレッシャーはないですね。 4代目をどうしようかというのは確かにありますが、まあ、どうにかなるでしょう。 事業承継について1つだけ言うならば、後継者は「しなければならない」という発想から始まります。 「会社を守らなければいけない」「社員を守らなければいけない」、そのために「売り上げを伸ばさなければならない」といったように。 だけど、自分で創業した人は「あれをしたい、これをしたい」からすべての発想が始まっています。 私自身、この転換が自分の中でできたのが大きなポイントでした。 世の中の後継者の方々は、そんなに過去や会社の歴史という呪縛に縛られなくていいと思います。 自分のやりたいことをやればいいのではないでしょうか。
■プロフィール
株式会社さかもと 代表取締役 坂本 英典 氏 1971年栃木県生まれ。東海大学経営学部卒。大手機械商社・山善を経て、25歳で家業の水回り設備商社「さかもと」(1936年創業)入社。業績悪化から脱却すべく、メイン事業からの撤退や本社売却、在庫全売却、社員のリストラを断行して、2019年に46歳で3代目として事業を承継。研究開発の末、2016年、漆加工の洋式トイレ「BIDOCORO」をリリースし、注目を集めている。