サイズ問題を乗り越えたウシクが「キレイ」なフューリーとの死闘制し、史上初ヘビー級4団体統一王者に
日本時間5月19日、ついにWBA/WBC/IBF/WBO時代以降、ボクシング史上初の4団体統一のアンディスピューテッド王者が誕生した。その偉業を達成したのは、サイズ問題(身長差約15cm、リーチ差約18cm、公開計量時体重差約13kg)から、劣勢が伝えられたオレクサンドル・ウシク(ウクライナ)だった。 【画像ほか】フューリーが崩れた第9Rの場面や、WBA発表の公式スコアなどのX投稿を本誌記事内で掲載。 序盤はリーチ差に苦しんだウシクだが、次第に距離感をつかむとその正確でシャープなパンチを15cmも高いタイソン・フューリー(英国)の顔面に叩き込み、中盤以降ゲームを支配。最終的に112-115、114-113、113-114、ウシクがスプリットデシジョン(2-1)での判定勝ちをもぎ取った。
▼大物相手にウシクが覆してきた下馬評の歴史
2021年9月、当時ヘビー級最強と謳われたアンソニー・ジョシュア(英国)からWBA/IBF/WBO王座を奪い取った時もアンダードッグの下馬評だった。だが、ウシクはクルーザー級時代からのコンパクトでスピーディーなボクシングでジョシュアを翻弄し、勝利と3本のベルトを掴んだ。ロシアによる母国ウクライナ侵攻で一時は選手生活を離れて国防軍に加わったが、ジョシュアとの第2戦に向けて現役に戻り、見事に王座防衛を果たした。 その後、WBC王者タイソン・フューリーとの史上初のヘビー級4団体統一戦に向けた交渉が始まるが、合意に至るまで長い時間を費やし、内定後もさらに延期を繰り返した。報道で知られるだけでも、2023年4月29日、同年12月23日、2024年2月17日、同年5月18日(すべて現地時間)と度々開催日が変更されてきた。多くがフューリーを起因とする延期だ。 フューリー自身、2度目の引退騒動を前後に、ここ数年はボクサーというよりもリアリティ番組の演者・インフルエンサーとして世間を騒がした。元UFCヘビー級王者フランシス・ガヌーとの「余興」試合で、敗北寸前まで追い込まれ、昨年末のウシク戦の予定日を延期。さらに2月上旬のスパーリングで右目上に裂傷を負い、3か月もの延期を生じさせた。 言動やファイトスタイルを含め、掴みどころのない「ぬらりくらり」が『ジプシーキング』タイソン・フューリーというボクサーの持ち味だけに、ここに至るまでがすべてフューリーの戦術にも見えた。 それに対してオレクサンドル・ウシクは、実直を絵に描いたようなボクサーだ。人気面では当然フューリーに分があり、一般公開された前日計量でも、フューリーに歓声が起きる一方、ウシクにはブーイングも聞こえた。今回の莫大なファイトマネーの分配は、フューリー7、ウシク3とも伝えられた。 ビッグマッチではつねにビハインドの評価に置かれながらも、ウシクはその堅実なボクシングで下馬評を覆してきた。今回も同様だった。