「一家の大黒柱」なのに香典で「おまけ扱い」…葬式で妻が感じた違和感
漫画家・田房永子さんの新刊『女40代はおそろしい 夫より稼いでたら、家に居場所がなくなりました』は、家事育児よりも仕事に邁進してきた、夫より年収のある3人の妻たちがコロナ禍に「40代の壁」にぶち当たる様を描いた、“中年危機サバイバル漫画”だ。 【漫画を読む】香典のルールにモヤモヤしていたら、親戚から聞き捨てならない言葉が…
世帯主は私なのに、私の親族の通夜なのに…
本作の中で、主人公のフリーデザイナーのふさ子は、祖母の通夜に参列するにあたり、香典に名前を記すときの正しいマナーを調べるために「お葬式の常識」系のサイトを見る。 そこには、“香典袋には世帯主である夫の名前を書くのが常識であり、たとえ妻の親族の葬式で、世帯主が女性であっても、日本ではイエとして男性を立てる習慣があるため夫の名前だけを書くのが無難である”、また連名にする場合、“夫の名前を真ん中に書いて妻は下の名前だけを左に書く”といった内容が書かれていた。 さらに、夫の親族や夫の職場の人の葬式に妻のみが参列する場合、“夫のフルネームの下に「内」と書く。これで夫の代わりに妻が出席したとわかる”“「内〇〇」と妻の下の名前だけ書く場合もあるが、馴れ馴れしさが出るから注意”とも書かれていた。 このことにふさ子は、ほんとうなの? 日本でこんなしきたりが「常識」で「マナー」なの?と驚くとともに、「どうしてそんなに女をいないことにするの」と悲しい気持ちになって1人夜、涙する。 実は、これは数年前に田房さんが実際に経験したことだという。そのときの思いが綴られたコラムを本作から抜粋、再構成してお届けする。 ※以下、田房さんによるコラム。
マナーにある「非常識」が非常識では?
漫画に登場するふさ子とおばあちゃんの関係は私の空想上のフィクションなので、実際の私と祖母の関係とは異なりますが、私にとって祖母は、よい影響もよくない呪いも気高い生き様も、途切れさせて欲しかった連鎖も、様々なものを私に見せ与えてくれた“源”でした。 そんなかけがえのない人の通夜に私1人が行くのに(子どもたちが発熱したため)、自分のフルネームを書くことはマナー違反だと知りました。 その代わり、私の祖母と2、3回しか会ったことのない夫の名前を書かないと「非常識」とされるって、それこそ非常識じゃないの!?悲しくて泣きながら、最後は私もふさ子のように、自分の名前をフルネームで書きました。 香典は地域とか風習とか宗教とか、いろいろな違いがあると思うので、今はこんな決まりは守らなくていいのかもしれません。でも私が2016年に体験したこの香典についての出来事は、もし今後、香典の決まりが変わったとしても、こういうことが「常識」となっていた瞬間があっただけだとしても、それを漫画に描き起こして出版しておきたいと強く願っていました。それが今回、果たされました……!(ワーワー私の中で鳴り響く歓声)