ホンダの2輪用電動過給機エンジンが話題だが、4輪では既に採用例あり! では電動化過給機のメリットとは?
インタークーラーの有無
興味深いといえば、ホンダの電動過給機付きV3エンジンにおいては「インタークーラー」がない仕様となっているのも注目だろう。せっかく過給しても空気が高温だと密度が薄くなるため実際にシリンダーに吸い込める酸素分子は少なくなってしまう。そこで過給した空気を冷やすのがインタークーラーの役割だ。 ターボチャージャーの熱で暖まった空気を冷やすためだから、スーパーチャージャーにはインタークーラー不要と思われるかもしれないが、気体は圧力が高まると熱くなる。それを冷やすのがインタークーラーであるから、スーパーチャージャーだから不要とはいえないのだ。 逆にいえば、インタークーラーが不要な設計ということは、さほど吸気の温度が上がらない想定であるはずだ。つまり、ブースト圧はそこそこ控えめな設定と想像できる。また、インタークーラーを付けることでレイアウトの自由度という電動スーパーチャージャーのメリットが失われてしまうのを嫌った面が強いのかもしれない。 これらを踏まえると、ホンダの新設計V3エンジンに電動過給機を採用する理由としては、レイアウトの自由度を活かしてコンパクトにまとめること、最新のエンジンとして十分以上の最高出力や最大トルクといったスペックを実現することであると考えられる。 コンパクト&ハイパワーというのはパフォーマンスを上げるための普遍的なアプローチである。非常にユニークで最新テクノロジーを満載するであろうホンダのV3エンジン搭載車は、おそらくオーソドックスなスポーツライディングに対応したエンジンとなることだろう。 余談だが、筆者は初期型のホンダ CBR1000RR-Rファイアブレード(SC82)を愛機としているが、このエンジンはどの回転域でも力強さが変わらないという、超フラットトルクの一面も持っている。ある意味でモーターのようにどこからでも運転手の意思に反応する鋭いレスポンスのエンジンに仕上がっている。電動過給によってブースト圧を緻密にコントロールしたV3エンジンのリニアリティが、そのフィーリングを超えることも確実であろうから、おおいに楽しみだ。 レポート●山本晋也 写真●ホンダ/アウディ/HKS/カワサキ