シザーズドアがルノーにもあった! ソフトトップもないルノー・スポール「スピダー」は超硬派ゆえに700万円でも落札されず
2つのバージョンが設定された
ボディはFRP製で、サイドウインドウやソフトトップを持たない純粋なロードスター。ドアは、斜め上に跳ね上がるシザースタイプとされた。 1996年に発売されたロードバージョンには「ソートヴァン(saute vent)」と「パラブリーズ(pare-brise)」という2つのバージョンが設定された。後者のパラブリーズには大型のウインドスクリーンが与えられるが、ソートヴァンはウインドシールドさえ持たず、コクピット直前に「エアロスクリーン」と呼ばれるディフレクターを装着する。これがスピダーにおけるデザインアイコンとなった。 発表の際に、ルノーがプレス向けに配布した広報資料にて「ルノー・スポール スピダーはロードユースにも適合するレーシングカー」と謳っていたとおり、公道走行に最低限必要とされた保安部品以外は、エアコンやオーディオなどの快適装備はもちろんのこと、ABSや電子制御LSD、パワーステアリングやブレーキブースターなど、1990年代においてもすでに常識となり始めていたアシスト装備も一切持たないという、きわめてスパルタンかつストイックなスポーツカーだったのだ。
60台のみが販売された英国向け右ハンドル仕様の「パラブリーズ」
ディエップの旧アルピーヌ・ファクトリーでは、1日4台のペースのハンドメイドで、1685台のルノー・スポール「スピダー」を完全ハンドメイドで生産したといわれるが、2024年5月18日、アイコニック・オークショネアーズ社が英国ノーザンハンプトン州シウェルのローカル飛行場を会場とするオークションに出品したのは、英国マーケットで60台のみが販売されたといわれる、右ハンドル仕様の「パラブリーズ」である。 ちなみに英国市場向けとしては、右ハンドル仕様のパラブリーズがもっとも多く生産されていたとのこと。ところが、実際に販売されたのは上記の60台のみで、残りの車両は運転席エアバッグを追加した左ハンドル仕様に戻され、主にドイツ市場で販売されたといわれている。いっぽう、日本には約100台のパラブリーズが正規輸入されたものの、こちらはいずれも左ハンドルだったという。 それはさておき、今回のオークション出品車両は、1997年12月16日にルノーの正規代理店「ベイリーズ・オブ・ハンリー」社を介して新車として納車されたのち、5000マイル(約8000km)強を走行しているとのこと。 FRP製ボディワークは、スピダーおよびルノー・スポールのシグネチャーカラーとされた、オリジナルの3層ペイントの「パールセント・リキッド・イエロー」で仕上げられており、いわゆる「ショールームコンディション」を今なお保持しているという。