エンジン分解時は単純洗浄で復元せずに徹底的なリフレッシュで爽快!!
気分爽快で組み立てられるシアワセ!!
ダックス&モンキー系や6ボルト時代のスーパーカブと同じく、ミッションシャフトの片側は砲金ブッシュ支持となっているクランクケース。その点、12Vモンキーや6V時代ならシャリィ用クランクケースの方が、ニードルローラーベアリング入りで、よりしっかり作られている印象だ。クランクケースが美しくなったことで、組み立て作業を気持ち良く進行することができる。プライマリーギヤなどのパーツも真っ黒に汚れていたので、マルチクリーナーに漬して洗浄した。 ────────── 【POINT】 ▶ポイント1・エンジン内部が「汚れているな~」には、必ず原因があるので、その原因をいしかしながら作業進行しよう ▶ポイント2・水溶性洗浄液は温めることで洗浄能力が一気に高まる! ▶ポイント3・サンドブラスト処理後はメディアの徹底除去に努めよう!!超音波洗浄機が無い場合は、部品をヒーターで温めた後にエアーブローしよう ────────── 通常レベルのエンジン内汚れなら、分解前のフラッシング処理で、ある程度の汚れはクリーンナップすることができる。しかし、汚れレベル(汚れ度合い)によっては、完全分解しないと、どうにもキレイにならないこともある。ここでは、後々のエンジンチューニングを見据え、クランクケースの汚れ落としを実践した。「エンジンオイルは抜いて保管していた」と前オーナーさんから伺っていたのがこのバイクだった。エンジンオイルを抜き取ってから20年以上経過していたので、果たして、クランクケース内部がどのようになっているのか?興味津々でもあった。 ところが、ビックリ仰天のコンディションだった……。過去に経験したことが無いほど、エンジン内部は真っ黒で、しかも、腐ったガソリン特有のイヤ~な臭いが漂ってくる……。エンジンオイルは抜いてあったものの、キャブレターからオーバーフローしたガソリンがエンジン内部へ流れ落ち、それが腐って、あのイヤな臭いを漂わせていたのだ。インナーパーツはすべて腐れガソリンが影響して、半固着のネトネト状態である。仕方ないので内部パーツをすべて取り出し、カセットコンロを利用してお湯を沸かし、花さかGマルチクリーナーを投入。さらに洗浄液を温めて、沸騰してから火を消した。その状態で、分解済みのクランクケースを洗浄液へ浸すことにした。 作業開始後、30分ほど経過したところでクランクケースを引き上げてみると、腐ったガソリンスラッジによって、ヌトヌトになっていたミッションベアリングは機能回復。スムーズかつガタも無くに回ることを確認できた。30分程度の洗浄では、クランクケースにこびりついた黒い油アカは落ちないので、そのまましばらく(半日以上は)浸したままで、放置することにした。 同時に、インナーパーツもクリーナー液に浸すことにした。クランクシャフトは、内部のオイル通路が開通しているか否か!?確認してみた。外観の汚れはまだ完全に落ち切れていなかったので、さらに洗浄液に漬して毛足の硬いブラシでゴシゴシ洗いがら汚れを落とした。クランクシャフトエンドのオイル通路へ圧縮エアーを吹き込むと、コンロッドのビッグエンド両サイドから、ブクブクと空気が噴き出していることが確認できた。さらにパーツクリーナーをオイル通路へ吹き付け、その後にエアーを吹き込むと、真っ黒に汚れたパーツクリーナーがビッグエンドの両サイドから吹き出す様子も確認できた。この作業によって、クランクシャフトのオイル通路通気は、確認できたことになる。 お湯+水溶性クリーナーでエンジンパーツを洗浄しても、エアーブローと乾燥後の注油によって、現状性能以上にコンディションが悪くなることはない。パーツの汚れが気になるときには、高性能ケミカルを利用して、積極的な部品洗浄とエアーブロー(乾燥機で温め後なら尚よし)を行い、フレッシュな気分でエンジンパーツを組み立てたい。 さて、エンジン内部が真っ黒に汚れてしまう最大の原因は何なのか……?それは、エンジン稼働中のクランクケース内入り込むブローバイガスが最大の要因だと考えられる。具体的には、ピストンリングの摩耗や張力不足によって、爆発燃焼ガスがピストンリングの隙間をかいくぐり、クランクケース内へ侵入してしまうことで汚れが発生する。言い換えれば、エンジン腰上を分解し、ピストンスカート部分やピストンピンボス部分が真っ黒くなっているときには、クランクケース内は相当に汚れていると考えられる。そんな状況に遭遇したら、エンジン腰下の分解メンテナンスを視野に入れよう。
たぐちかつみ