「妻と浮気相手の間に生まれた子」を見捨てられなかった夫の悲哀。養育費を支払う“条件”は離婚翌日に破られ…
托卵(たくらん)という言葉を知っていますか? 10月17日から「托卵」をテーマにしたドラマ『わたしの宝物』(フジテレビ系列)が始まったので、耳にした人も多いでしょう。もともとは人間ではなく鳥類の習性のことです。 例えば、メス鳥Aはオス鳥B、メス鳥Cの巣に卵を産み付け、孵化したひな鳥をB、Cに育てさせる習性のことです。Aは自分が産んだのに、そのひな鳥を育てようとしないのです。このドラマでは夫と血のつながらない子どもを「夫」に育てさせるという意味で「托卵」という言葉を使っています。
自分が父親だと自信を持てなくなった場合は…
妻の美羽(演:松本若菜)は幼なじみの稜(演:深澤辰哉)と再会。一夜をともにしますが彼の子どもを妊娠、出産。結婚期間中に妊娠した子どもの父親は原則、夫という法律があります(嫡出推定。民法772条)。これにより、夫の宏樹(演:田中圭)に子どもを育てさせるーーというのが『わたしの宝物』の大まかなストーリーです。 「僕の子じゃないんじゃないか」と夫が疑うきっかけの例をあげていきましょう。夫と子どもの性格がまったく逆、容姿が違いすぎる、夫や妻と子どもの血液型が異なる、毛髪や唾液のDNAを鑑定し、「99.9999%、親子ではない」という結果が出た……などが浮かびます。仮に自分が父親だと自信を持てなくなった場合、どうすれば良いのか。選択肢は以下の3つです。 ・妻、子どもと縁を切る(妻とは離婚、子どもの戸籍の父親欄から抜ける) ・妻と離婚するけれど、子どもの父親のまま。養育費を払う ・何もしない(妻と離婚せず、子どもの父親のまま、結婚生活を続ける)
なぜ養育費を払う選択をしたのか
最高裁判所(平成27年)によると親子関係の存在について申立件数は年間233件です。筆者は行政書士、ファイナンシャルプランナーとして夫婦の悩み相談に乗っていますが、過去に「男の離婚本」を5冊も出版しているため、「不倫の子」について相談しに来る男性が一定数います。今までの相談者は1と3を選んでいましたが、今回の相談者・北条優斗さんは珍しく2を選んだので印象に残っています。なぜ、本当の父親が別にいるにもかかわらず、子どもの父親として自分の財布から養育費を払うのでしょうか? なお、本人が特定されないように実例から大幅に変更しています。また夫婦の年齢や結婚までの経緯、親子関係の証拠などは各々のケースで異なるのであくまで参考程度に考えてください。 <相談者の属性(すべて仮名)> 夫:北条優斗(38歳・会社員・年収600万円) 妻:北条彩音(34歳・専業主婦) 長男:北条陸斗(2歳) 妻の元彼:結城浩太(38歳・職業不明・年収不明) 優斗さんは「先生にこのような相談をしないといけないなんて。とても悲しいです」と前置きした上で「今までずっと疑っていました。息子が自分の子じゃないんじゃないかって」と下唇を噛みながら言います。優斗さん夫婦には現在、2歳の長男がおり、昨年購入した郊外の戸建に住んでいます。一見すると絵に書いたような幸せな家庭のようですが、実際は大きな火種を抱えていました。 優斗さんと息子さんは性格や容姿が正反対でした。