「PGAツアーvsリブゴルフ」世紀の対抗戦の賞金は“暗号通貨”でお支払い!? ツアーに押し寄せるデジタル化の波
スポンサーの暗号通貨企業はさまざまなスポーツに進出
「クリプト・カーレンシー」とは、暗号通貨のこと。 モノの本によると「クリプト・カーレンシーはインターネット上で管理されているデジタル通貨のこと。以前は仮想通貨とも呼ばれていた」とある。「ビットコインやイーサリアムといった仮想通貨全般が暗号通貨と呼ばれるケースもある」といった説明もある。 とはいえ、暗号通貨に興味も馴染みもない方々にとっては、こうした説明を聞いたところで、「クリプトで支払われる優勝賞金」は、まるでピンと来ない別世界の話のように感じられるのではないだろうか。 なぜ、この「ザ・マッチ」の優勝賞金がキャッシュからクリプトに変わるのか? その答えは、米ゴルフウィークによると「Crypto.com(クリプト・ドットコム)」が大会のスポンサーになったからだそうだ。 シンガポールに拠点を置くクリプト・ドットコムは、暗号通貨の取引や運営を手掛ける企業で、大会名も「ザ・マッチ」から「クリプト・ドットコム・ショウダウン」へ変更される見込みだという。 ゴルフ界のビッグ大会において、賞金がクリプトで支払われるのは史上初ということで、世界のゴルフ界では大きな注目が集まっている。 しかし、どうやらゴルフ界のそんな動きは他のスポーツより後れを取っている様子で、すでにクリプト・ドットコムは、カーレースの「フォーミュラ1」や格闘技プロモーターの「UFC」などとの間でパートナーシップを結んでいるそうである。 2021年には、ロサンゼルスの大型アリーナ「ステープルズセンター」の命名権を獲得し、同アリーナの名称を「クリプト・ドットコム・アリーナ」に変更。 以後も、サッカーやアイスホッケーなどスポーツ界のあちらこちらで「クリプト」の名前が躍っている。
芝刈り現場の「かっこいい人々」はロボットに置き換えられつつある
PGAツアーには、選手たちの一打一打の情報を含め、さまざまなデータが得られる「ショットリンク」という優れたシステムがある。 しかし、昔々のPGAツアーには、当たり前だが、そんな優れものは存在していなかった。 コース上を歩いているときでも、全選手のホールバイホールの情報を手元で見ることができる小型端末が、試験的にメディアに配られたのは、2000年代の序盤ごろだった。 それを手にしたときも、私は仰天させられ、感動さえ覚えたのだが、今では、「そんなこと」はスマホ一つで簡単にできる時代になっている。 ゴルフコースにおいて、芝を刈るという作業は必須であり、早朝あるいは試合終了後に、次なるラウンドに備えて大型の芝刈り機が列をなして芝を刈るシーンは、PGAツアーの試合会場で目にする大好きな場面だった。 芝刈り機を操るメンテナンススタッフの姿は、とてもプロフェッショナルに見えて、「かっこいい」といつも見惚れていた。 だが、昨今の米ゴルフ界では、一部で芝刈りロボットが導入され始め、芝刈り現場の「かっこいい人々」は、ロボットに置き換えられつつあるという。 ゴルフの世界とその現場は、時代の流れや変化に沿って、どんどん変わりゆくもののようで、そうした動きは時代の要請でもあるのだろう。 おそらく、そうした動きを止めることはできず、止まることもないのだろうし、ファンに恩恵をもたらすものであれば、それはウエルカムな変化である。 ただ、あまりにもスピーディーに変わってしまうと、その変化に「付いていけない」と感じ、一抹の寂しさを覚えて、ゴルフから離れてしまう危険性もある。 世界中のゴルフファンは、そして選手たちは、「クリプトで支払われる優勝賞金」に、果たして何を感じるだろうか。 文・舩越園子 ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。百貨店、広告代理店に勤務後、1989年にフリーライターとして独立。1993年に渡米。在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続け、日本の数多くのメディアから記事やコラムを発信し続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。
舩越園子(ゴルフジャーナリスト)