JICDAQ認証企業を介したデジタル広告取引、アドフラウド発生率が大幅低減|JICDAQ23年度活動報告
この成果として、スペイン拠点の広告配信事業者が日本コンテンツの海賊版サイト27サイトへ広告を配信しているのを発見。弁護士を通じて警告した。後藤氏によると、日本の権利者が海外の広告配信事業者に対して、具体的な広告出稿停止を警告したのはこれが初のケースとのこと。
移転繰り返す海賊版サイトには、広告表示停止で対処
海賊版サイトの実例として挙げられたのが「Dramacool」と呼ばれる一連のサイトだ。過去に国内企業の広告が表示されてしまったことが確認されている。
このサイトは、ドメインを次々に変更する「ドメインホッピング」を繰り返している。サイト運営者を発見したり、稼働自体を停止させたりするのは難しいが、広告の表示停止措置は、サイト運営者ではなく広告配信者へ要請できる。後藤氏も「いたちごっこ感は拭えないが」としつつも、次々発生する類似サイトに対して、広告掲載停止要請を随時行っているとの現状を説明した。広告配信者の対応も徐々に改善しており、当初は停止依頼から反映まで1週間程度かかっていたものが3日程度に短縮したという。
ちなみに、イギリスはブランドセーフティの対策が進んでいるとされ、海賊版サイトに出稿されている状況を放置すれば不正な利益供与とみなされ、法律にすぐさま抵触する恐れがある。よって広告主も真剣に取り組まざるを得ないのが実情だそうだ。 対して日本は、CODAをはじめ、民間機関による取り組みが奏功。法整備に至る前の現段階でも、効果的な対応ができているという。もちろん海賊版サイト問題は深刻で、現在進行形の課題ではある。楽観はできないが、総じて海賊版サイトにおける日本人対象の広告が掲載される例は大幅に減少したと後藤氏は説明する。ただし、JICDAQやそれに類する団体に参加していないアウトサイダー企業が広告を扱う例もあるため、いかに対応していくかは今後の課題だとも補足した。 最後に、イベントの閉会にあたってJICDAQ理事の橋爪恒二郎氏が挨拶した。今やデジタル広告はマスコミ4媒体の広告規模を超え、さらにはIT技術などと結びつく形で新しいマーケティング手法を日々生み出しており、広告にまつわる業務一切が大きな変革期を迎えていると橋爪氏は改めて指摘する。
たとえばAIは近年の成長分野だが、生成AIの活用により、著作権侵害やフェイク広告のまん延など懸念もある。こうした今後発生しうる問題に対してもJICDAQとして向き合うべきであり、今後も関係者と緊密に協力していきたいと述べた。