メルセデスAMG Cクラス 詳細データテスト 足りないナチュラルさ 動力性能のわりに洗練度は高い
使い勝手 ★★★★★★★★☆☆
■インフォテインメント メルセデスのMBUXは、今やすっかりおなじみとなったマルチメディアシステム。ほぼすべての操作はタッチ画面式だが、レイアウトがよくできているので、じつにユーザーフレンドリーだ。 走行モードや充電設定、車両セッティング、カメラや音量を操作するショートカットバーが用意されている。ステアリングホイールの左側スポークにはトラックパッドや、センターディスプレイを操作するバックとホームの各ボタンも設置される。ステアリングホイール上のタッチ式スイッチが扱いにくいのは、毎度のことではあるのだが。 MBUXのゼロレイヤー・コンセプトは、ナビと空調の主要な操作、メディアのコントロールをホーム画面へ同時に表示できる。そのため、メニューの階層を深く掘ることはめったにない。 デジタルメーターパネルは、レースビューやマップビューなど、表示スタイルが数多く用意されている。しかしわれわれは、クラシックな円形2眼がもっとも見やすいと思う。エンジンやギアボックスの油温といった情報はメーター内に表示可能で、パフォーマンスカーとしては便利だ。 ■燈火類 パワーはエクセレント。アダプティブマトリックス機能も上々だ。 ■ステアリングとペダル 2ペダルの配置は一般的なものだが、さまざまなプラスティックのコンポーネントによりフットウェルはタイトで、左脚をゆったり伸ばすことができない。ステアリングコラムは電動調整式だ。
操舵/安定性 ★★★★★★☆☆☆☆
2217kgというテスト車のウエイトは、大型EVが登場した今となっては以前ほど目くじらを立てるような数値ではなくなったが、それでもさほど大きくないワゴンとしてはかなりの重さだ。また、その重量は、低いところに集中しているのではなく、クルマ全体に散らばっている。 C63のグリップとシャシー技術は、それなりに俊敏さを装っているのだが、隠しきれない重さは厳然として存在する。とくに、ターンインや、路面のトリッキーな地形に対応するときはそうだ。同時に、複雑なシャシー技術すべてが、しばしばハンドリングレスポンスのナチュラルさを、理想とはかけ離れたものにしてしまう。 メルセデスは、可変レシオの操舵系や4WSをかなりナチュラルに仕上げることが多いのだが、C63の超クイックなステアリングラックがだいぶ違う結果を産んでいるのかもしれない。ロックトウロック1.9回転という数字に覚悟するほど過敏ではないものの、やはり繊細な入力が求められる。また、公道を普通に走るような速度域では、フィードバックが十分ではない。 試行錯誤してAMGダイナミックのセッティングを探っても、満足のいく後輪駆動的なハンドリングのバランスがこのクルマのレパートリーには見いだせないだろう。それを実現するには、スタビリティコントロールをスポーツモード、4WDシステムをマスターモードに、それぞれ設定しなくてはならない。 その設定なら、敏捷性に楽しめる感覚が加わる。といっても、純粋な後輪駆動のような挙動を示すことは決してない。せいぜいニュートラルを保とうとするくらいだ。強引に飛ばすと、微妙にスロットルでアジャストできるのではなく、予測できない状態に陥る。しかし、ハイレベルなメカニカルグリップを考えると、その領域に達するにもかなり攻めた走りが必要で、C63はそれほどその状況を表したがらないように感じられる。 サスペンションは、コンフォートモードにしておくのがベスト。ある程度の速度までは、バンピーな道をすばらしくうまくいなしてくれる。カントリーロードでその速度を超えると、ダンパーは車両重量の扱いに苦戦しはじめ、乗り心地はギクシャクしたものに変わる。 このクルマが持つパフォーマンスのポテンシャルを考えると、その速度域には驚くほどたやすく足を踏み入れてしまう。スイートスポットはきわめて小さく思えてしまう。