「令和のコメ騒動」不足解消でも楽観できない事情…人口減少社会で「農地改革」が進まない
さらに、海外から輸入できたとしても、国内にすさまじいインフレをもたらす「超円安」が発生したときには、これまでのシステムでは国民を飢えさせてしまうことに気付いたことには高く評価すべきなのかもしれない。 ■国際的には高い評価の日本の食料安保? 日本の農業政策は、海外に比べれば、確かに食料自給率は低いものの、今回の「米騒動」のような事態はほとんどこれまでなかった。例えば、英誌エコノミストの調査部門であるエコノミスト・インパクトが2022年9月に発表した「食料安全保障指数(GFSI)」によると、日本は調査対象の113カ国の中で6位となっている。
食料安全保障指数は、食料安保という観点から価格の手頃さ、物理的な入手のしやすさ、品質・安全性、持続可能性、適応性といった項目で数値化したものだ。そのランキングを見ると、次のようになっている。 1、フィンランド 2、アイルランド 3、ノルウェー 4、フランス 5、オランダ 6、日本 7、スウェーデン 8、カナダ 日本の食料安保は、国際的には非常に高いレベルにあると言っていい。日本の農業政策は食料自給率の低さばかりがクローズアップされてしまうが、そういう意味ではエネルギー政策に似たものがある。日本のエネルギーは、ほぼ海外に依存しているわけだが、一時的なものを覗いて、エネルギー不足に陥ったことはほとんどない。
とはいえ、近年のインフレは農業生産にも大きな影響を与えている、例えば「農業物価統計指数」よると、2023年平均の「肥料」の価格指数は147.0(2020年=100)と約5割上昇しており、家畜の餌である飼料も145.8(同)となり5割近く上昇している(日本農業新聞「23年資材価格が過去最高 飼・肥料3年で1.5倍 農産物へ転嫁限定的」2024年1月31日)。 そんな中で農家の出荷価格は野菜が2023年の平均で113.3(生産者価格指数、2020年=100)と1割の上昇にとどまっている。農産物全体でも107.8にとどまっており、コストを価格転嫁できていないのが現状だ。
人口減少や流動性の少ない農地売買の実態を考えると、日本の農業生産の現場は、持続可能な事業というにはほど遠い。政治家は簡単に世襲が可能だが、日本の農家は世襲すら許されない。それが、現在の日本の農業現場と言っていいだろう。
岩崎 博充 :経済ジャーナリスト