初V監督の古葉氏が語る広島に受け継がれている伝統
いよいよ25年ぶりの広島カープの優勝の瞬間が近づいてきた。マジック「2」。きょう8日、マツダスタジアムで行われる中日戦と、甲子園で行われる阪神ー巨人戦の結果で優勝が決定することになる。 1975年に球団史上初の優勝を広島にもたらし、1979年、1980年、1984年と、計リーグ優勝4度、日本一に3度輝き、広島の黄金期を作った古葉竹識氏(80)にV直前の広島について話を聞いた。 古葉氏は「私が監督のときに球団創設初優勝をしましたが、25年間、優勝できずに、そのときが創立26年目。今年が25年ぶりの優勝でしょう? 25年という周期に広島は縁があるのか、どこか重なってしまいますね」という。快進撃を続けた今季のカープの戦いに1975年チームとの類似点、積み重なってきた伝統を感じると、古葉氏は続けた。 「私は、5月にルーツ監督が退任された後を受けてシーズン途中に守備コーチから監督に就任したのですが、来年、再来年を考えたとき、練習量に裏づけされたものがないと勝てない、と考えて、とことん練習をしました。そして、戦術的に使ったのは機動力と守備の向上です。相手の隙をつき理想的な展開のゲームに運びこむ広島野球の原点です。当時、監督就任時には優勝を考えたことはなかったのですが、首位を走り出しました。 当時は、大下、三村が機動力、守備力の中心となりました。 今年のカープもそうでしょう。受け継がれている伝統を感じるんです。バットスイングを見れば、どれだけの練習量に裏づけられているかが、わかります。1979年、1980年にペナントレースと日本一を連覇しましたが、徹底した練習でスイッチバッターとして成功した高橋慶彦ら若手がチームを押し上げました。菊池、丸、田中、鈴木らの厳しい練習で育ってきた姿を感じます。機動力を絡めて、あきらめずに2アウトから点を取りますよね。そういうしぶとさは初優勝のチームにもありました。勢いにつながっていくんですよね。そして、菊池、田中、丸のセンターラインを軸にした守備力。広島が勝つ条件がそろったシーズンでしたね」 古葉監督は、ルーツ監督が審判の判定を巡ったいざこざから5月に途中退任すると監督に昇格。練習量を増やして、機動力野球を導入した。その中心になったのが、日ハムから移籍して44盗塁を記録しトップバッターとしての存在感を示した大下剛史。故・三村敏之とのコンビで、足をつかってひっかきまわすと、7年目の山本浩二、11年目で三塁にコンバートした衣笠祥雄の2人に、シェーン、33本塁打をマークしたホプキンスらの外国人コンビが、打ちまくって赤ヘル旋風を巻き起こした。 大下、三村の二遊間の守備の安定度も、隠れた広島の強さの秘密だった。今季の菊池、田中の二遊間の守備力と重なる部分。次の塁を常に狙っていく機動力にプラスして、センターラインの充実も広島の継承されている伝統なのだろう。