<いざ!頂点へ・24センバツ報徳学園>軌跡/下 堅守と機動力に手応え 低反発バットに勝機 /兵庫
1月初旬の午後3時過ぎ。トレーニングを終えた選手たちが、炊き上がった白飯の入ったタッパーを次々と持って行った。体重増加のため三食以外に1人で1・5~2合を食べる。細身で太りにくい今朝丸(けさまる)裕喜投手(2年)も、食事を意識することで昨秋から3キロ増量した。 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 大角健二監督(43)が「完全なる力負け。前チームより非力なことが露呈した」と厳しく評した2023年秋の近畿大会準々決勝の大阪桐蔭戦から2カ月あまり。選手たちは体重や筋力、瞬発力など、定められたメンバー入りに必要な身体能力の基準を超えようとトレーニングに励んできた。 ただ、22年秋の近畿大会で大阪桐蔭に3安打完封された時とは異なる雰囲気がチームに漂っていた。選手たちの胸に渦巻いていたのは、「勝てた試合だった」という後悔だ。初戦に勝利した後、練習に気の緩みが出ていた自覚があった。 それでも、大阪桐蔭打線に11安打を浴びながら失策ゼロで4失点にとどめた。適時打は出なかったが、スクイズと犠飛、押し出しで3得点し、打線が不調でも機動力で競り合えた。礒野剛徳部長(37)も「今回は接戦に持ち込めた。前回のように相手を強く意識するよりも、まず自分たちの力を上げていかないと勝てないと実感した」と振り返る。 堅守と機動力を駆使した報徳学園の戦いぶりは、反発性能を抑えた新基準の金属バットが今大会から導入される中で「有利に働く」というのが指導陣の共通認識だ。 野手を指導する宮崎翔(つばさ)コーチ(37)は「野球がガラッと変わり、うちが新しい高校野球のトップリーダーになれる可能性がある」と、走塁練習に時間を使ってきた。大角監督も「今年のチームは甲子園を知っている。日本一を目の前で見て、手応えを感じているはず。もっと貪欲さを出してほしい」と期待を込める。 1月26日、「準優勝旗を全員で返しに行く」を合言葉に励んできた選手たちは、センバツ出場が決まると「日本一を目指してやっていきたい」と口をそろえた。対戦相手がどこであっても関係ない。この春、報徳学園の選手たちが見つめているのは、栄光の頂点だけだ。【稲田佳代】 〔神戸版〕