「うつるから話しかけないで」クラスの友だちが急によそよそしくなった…ある障害を抱えた女性は「注文に時間がかかるカフェ」を開いた
自身がカフェのアルバイトを諦めたように、吃音が原因でやりたい仕事に就けないという思いを、他の当事者の人たちにはもうしてほしくなかった。吃音があっても時間をかければできることは多いと思う。だからこそ、訴えたい。 「沈黙は起きてしまうけれど、周りの人はあんまり気にしないでほしいな」 奥村さんの願いだ。 【編集後記】 記者の私が奥村さんを取材する中で、気になる言葉があった。それは「注文に時間がかかるカフェ」の参加希望者の中で、時々急きょ参加をキャンセルする人が出るという話だ。 奥村さんが、そのうちの一人の女性に理由を聞くと打ち明けられたという。 「家族から『参加して吃音だということが周囲に分かれば差別されるから行くな』と言われた」 奥村さんは「吃音は長らく恥ずかしいものとされ、当事者はいかに隠すかを考えてきた。そのため症状に対する一般の理解が広がっていないのでは」と懸念している。
なぜこうした状況にあるのか。専門医で自身も当事者である旭川荘南愛媛病院(愛媛県)の岡部健一院長に問題の背景を聞いた。 「吃音に関する正確な情報を持つ人は少なく、無知と誤解が偏見につながっている」。岡部院長は「吃音相談外来」を開設し、長年患者の相談に乗ってきた経験からそう話す。 岡部院長によると、吃音がある人は100人に1人と言われており、大勢の前で話すと症状が出る人、リラックスしていると出る人など、症状が出るタイミングはさまざまだ。原因は遺伝や周囲の環境とされており、近くにいても症状がうつることは決してない。 その上で岡部院長は打ち明ける。「症状を知られたくない人もいて、カミングアウトしづらい社会の雰囲気があるのが現状だ」 奥村さんが言っていた「吃音があっても時間をかければできることは多い。周りの人はあんまり気にしないで」という言葉。そこから始めてみようと思った。(共同通信=西村曜、吉田梨乃)