最高哲学責任者(CPO)で会社はどう変わるか? エシックス(倫理)と資本主義を考える(4)
企業経営の分野で「エシックス(倫理)」が注目されている。日本を代表する企業のアドバイザーを長く務めてきた名和高司氏。3年前に「パーパス経営」を提唱し、日本でのブームの火付け役となってきた。 しかし、今やパーパスの実践に行き詰まる企業も数多い。その解決策として、経営において倫理を判断軸に据えるとする『エシックス経営』を提唱している。 【写真】なぜ立派なパーパスを作っても実践できないのか?理想と現実をつなぐ判断軸は「倫理」にある また、「哲学界のロックスター」と称されるドイツ・ボン大学のマルクス・ガブリエル教授は、道徳的価値と経済的価値を再統合した「倫理資本主義」を提唱し、日本に向けて書き下ろした近著『倫理資本主義の時代』が大きな話題となっている。
今回、ガブリエル教授の来日に合わせ、日独の「倫理資本主義」について、大いに語り尽くしてもらった。 ■なぜフェイスブックは社名変更に追い込まれたのか? 名和:ガブリエルさんは、コーポレートガバナンスの一環として最高哲学責任者(CPO:Chief Philosophy Officer)と倫理委員会を置くべきだとおしゃっていますね。 ガブリエル:仮にCスイート(最高責任者職)の人々が集まった組織があり、CPOが率いているとしましょう。ちなみに、最高倫理責任者(Chief Ethics Officer)としなかったのはCEO(最高経営責任者)と被ってしまうからです。
この集団の機能は、まず社内の企業文化に目を向けることです。企業文化の道徳的事実は何か。他のどのよい社会的関係においても、まずは内部から始めて、自分自身の魂に取り組む。そうすれば、対外的関係はよりよいものになるでしょう。 次に製品を通して顧客との外部関係を見ていきます。自社は何をしているのか。市場で人々とどのような関係を持っているのか。すべて倫理的観点から評価し、矛盾があれば、すぐに解決を図らなくてはなりません。
たとえば、フェイスブックが当初大成功を収めたのは、対外的に自由を約束したからです。連絡を取り合い、友情を育み、民主主義が広まり、倫理的製品だと。ところが、内部はすでに非倫理的な考えに基づいていました。 当初のアルゴリズムは性的魅力度の観点で人々をランク付けし、大学の社交グループのようなゲームをしていたのです。その後、「いいね!」ボタンを導入するなど、非倫理的な意思決定を始めました。 これについてロジャー・マクナミーが『Zucked』という著作で言及しています。「Zucked」は造語で、フェイスブックCEOのマーク・ザッカーバーグにしてやられたという意味です。