『光る君へ』道長からの褒美の扇に描かれた男女にまひろは…『竹取物語』を連想させる筆記具も。細部まで見なければもったいない!
◆『松藤』は「藤壺」のシンボルツリー ドラマの中にたびたび登場し、ゆっくり見たいと思ってしまうのが、中宮彰子の住まいである「藤壺」だ。藤壺は火災にあい消滅し、ドラマでは新しい藤壺が登場している。藤原道長と嫡妻の倫子(黒木華)が、愛する娘のために、そして一条天皇(塩野瑛久)を迎い入れるために、贅の限りをつくして作り上げた館である。 「平安時代は庭に梨の木があれば『梨壺』、藤があれば『藤壺』と呼ばれていたそうです。当時は藤棚がなく、時代考証の先生にお聞きしたり、絵巻物を見たりして調べました。松に絡ませて藤を愛でていたとう資料があったのです。藤の花房が庭の砂についてしまうほど垂れ下がる『砂ずりの藤』を松に絡ませて飾りました。『松藤』は、この館のシンボルツリーです」 (NHK 映像デザイン部・山内浩幹チーフデザイナー) 。 「松藤」は館の左右に植えられている。土御門殿にも「松藤」はあるが、中宮の館の庭にふさわしい豪華なデザインにした。一条天皇の訪れを待つのに、ふさわしい庭の景観だ。 室内で最大に豪華なのは、当代一流の公卿たちが彰子の入内を支持して寿いだ和歌の色紙を貼った屏風。道長の権力を象徴するもので、居室の中心に位置している。絵はこのドラマで衣装デザインを担当している日本画家の諌山恵美氏が、このドラマのためだけに描いた。 「藤は『藤原』の象徴としています。藤壺では藤色である紫を差し色に入れることを考えました」 (NHK アート・枝茂川泰生デザイナー) 。 室内は、御簾の紫野筋、紫雲文様の几帳など、紫をキーカラーにした装飾にしている。 螺鈿や蒔絵を施した唐櫃をはじめ高燈台、釣香炉、朱塗棚、季節の花を挿した角盥(つのだらい)など、どれも贅沢な柄の調度品だ。
◆中宮彰子に仕える女房たちの局と日常 藤壺の北側にあるのが女房たちのバックヤード。約2間角の部屋が一列に並んでいる。 まひろが中宮彰子の教育係として女房になり、出仕したことにより、ドラマでは女房たちの日常を知ることができる。 このドラマが始まった時、私の友人が「平安貴族はすごい。吹き抜けの住まいで冬は寒さに耐えたのね」と言った。私は「館の何処かから雨戸を運んできて閉めるのかもしれない、体力がいるね」と答え、知識のなさに今は恥じ入っている。 ドラマを見れば、住まいが吹き放しでないことが分かる。蔀戸(しとみど)というのがあり、朝は蔀戸を屋根の方に上げ、夜は下げて閉めるのである。 女房たちの局(部屋)は、引物や壁代で仕切られ、2人で使用している。 各部屋の外にある廊下の部分は細長い部屋として使われ、「廂」(ひさし)と呼ばれ、化粧スペースや着替えスペースがある。 平安時代の絵巻は「吹抜屋台(ふきぬきやたい)」という特徴的な構図で描かれている。天井がなく上から見た絵である。ドラマの撮影ではその絵巻のように、室内の様子を俯瞰する構図をイメージし、ドローン撮影ができるようにした。
【関連記事】
- 百人一首の歌が彩る『光る君へ』の名場面。道長の父や兄が、死に際に愛でた妻の和歌。歌人、儀同三司母って誰のこと?
- 井上あずみ「40周年記念コンサート開演直前に脳出血で倒れて。緊急手術から1年が経ち、家族と一緒にリハビリ中。病気の前より夫婦仲は深まって」
- NHK『あさイチ』『光る君へ』の美術チームがすごい!セットからエコへの挑戦を知り、番組の見方が変わった!
- 『光る君へ』一条天皇役 塩野瑛久が語る「楽しかったのは最初だけ。あとはもがいて、苦しんで…。日焼けもしないよう気を付けました」
- 『光る君へ』の重要なシーンにも使われる和歌。紫式部の家系には意外な親戚や、百人一首でおなじみの有名歌人がずらり!百人一首が生まれた地は?