したたかに「アメリカの弱体化」を見越していた、岸田政権が国連演説で見せた「政治的リアリズム」
いずれにせよ、大衆を煽るためにメディアが不正確なことを報道するのは、きわめて悪質な行為だと思います。 ■「グローバルサウスの台頭」から見えること アメリカ組の縄張りが狭まっている(アメリカの弱体化)現在の世界で、それではどこが台頭してきているのでしょうか。それはグローバルサウスであるといえます。 この問題に早く気づいたのは、実はグローバルサウスの学生たちです。その証拠に、グローバルサウスの国々では明らかに英語熱が薄れてきています。語学留学をする学生が減っているし、外資系企業よりも国内の安定した企業に就こうとしている。
この現象からは、「グローバルサウスの逆襲」という文脈が簡単に導き出されます。つまり、アメリカが主導してきたグローバリゼーションが機能しなくなってきたということです。それを学生たちは気づいているし、大学側も気づいているのです。 日本の学校でも英語で授業を行うというのが一昔前のトレンドでしたが、今やそういう授業はどんどん減ってきています。さらに、文科省も「グローバル化」とはあまり言わなくなってきました。
このことは、アメリカが弱体化したことと繋がっています。弱体化したアメリカが他の国のために軍隊を動員することができるかといえば、もはやできないと考えるべきでしょう。そのことは、トランプが大統領になればはっきりと示されます。 ■トランプは「アメリカの利益」だけを考える トランプが大統領になれば、アメリカの利益だけを考えるようになるので、安全保障の問題にしても、アメリカがこれからも日本を守ってくれるとは考えないほうがいいと思います。
たとえば、日米安全保障条約の問題点について、田原総一朗は著書『トランプ大統領で「戦後」は終わる』で、「この条約は日本がどこかの国から攻められたらアメリカが日本を守るが、アメリカがどこかの国から攻められても日本は守らないという片務条約」であると語っています。このような非対称的な条約に膨大な資金を費やすことを、トランプが認めるはずはありません。 つまりは、日本が自前の防衛力を強化しなければならない事態になり得る可能性も高くなるというわけです。