あなたの中に眠る「使える短所」と「使えない長所」 禅僧が説く「長所がない」と嘆く前にやるべきこと
では、どうするか。例えば、長所を「自分が好きなもの、夢中になれるもの」と読み替えてみませんか。 長所というと、「他の人より優れていないといけない」「仕事に役立ちそう、お金になりそうでないといけない」と思い込んでいる人がいるようです。 つまり「人より優れていないなら、お金にならないなら、磨く価値がない」というわけですが、それは拙速な決めつけだと思います。夢中になること、すなわち「今、この瞬間」を全力で生きることの積み重ねが人の幸せをつくるのですから。
何より、夢中は努力に勝ります。「努力しよう、頑張ろう」と必死になるより、楽しみながら続けたほうが、得てして、よい結果が出るものです。 こうしたお話をしていると思い出すのは、手先が器用でプラモデルづくりが得意だった友人のことです。彼は某大手信託銀行の就職が決まっていたのですが、それを蹴って歯学部に入り直し、今は歯医者になっています。 「俺が一番得意なことは、人が真似できないような細かい作業をすること。プラモデルづくりのように仕事ができないかと思ったんだよ」。作業が細かければ細かいほど「燃えてくる」と彼は話してくれました。
彼の人生には、長所探しのヒントが隠れているようにも思います。 人が夢中になれることは、小さい頃から案外変わらないということ。高じてそれが自分の長所に、得意なことになり、仕事選びの決め手にもなること。 自分が夢中になれることにすら思い当たるものがない人は、ゆっくりと腹式呼吸をして、心を整えてから、これまでの自分を振り返ってみてください。 子どもの頃、食事をとるのも忘れて没頭したことはありませんか。
誰かに言われなくても『つい』やってしまうことは、ないですか。 これまでに、一番お金をかけてきたものは、なんですか。 あなたはこれまで、どんなことに夢中になってきたのでしょう。その答えの隣に、あなたの長所も潜んでいます。ぜひ探りを入れてみてください。 ■長所を「生かせる場所」を探したい 長所にまつわるお話を、もう1つしたいと思います。 「長所を磨く」とは、単純に能力を伸ばすことではありません。それを誰かのために役立てることや、その誰かがいる環境を見つけることも、含まれています。