体操・岡慎之助 2年前の大けが乗越え金メダル 「前十字靭帯」負傷時のリハビリや治療法を解説
前十字靭帯損傷の症状
Q.前十字靭帯損傷の症状はどのようなものですか? A.前十字靭帯損傷の症状として、受傷時は膝に強い痛みが生じ、そこから約3週間は急性期と呼ばれ、膝の痛みや可動域の制限が続きます。場合によっては腫れが目立ってくる時もあります。 その後、次第に痛み・腫れ・可動域の制限は解消されてきますが、膝が不安定に感じられることが多くなるでしょう。そしてその不安定感があるまま経過していくと、損傷した前十字靭帯の機能を膝にある他の組織がカバーするため、半月板損傷や膝軟骨の損傷が2次的に発生しやすくなります。加えて慢性的な痛みや腫れも伴う可能性があります。 Q.前十字靭帯損傷はどうやって見分けますか? A.前十字靭帯損傷を診断するにあたっては、受傷した膝に対して曲げ伸ばししながら膝の緩みの程度を比較します。専用の計測器を使用すると、緩みの具合を数値化してより正確に診断できます。 また、MRI検査は前十字靭帯損傷の診断に有用な検査です。MRI検査は骨だけでなく、膝全体の靭帯や半月板などの状態を鮮明に写しているため、正確に診断しやすいといえます。加えて、どの靭帯が損傷しているのか見分けることが可能です。 損傷している靭帯はどこか・他にも損傷している箇所がないかを確認できると治療も損傷した箇所に応じて行えます。膝の内部の状態についてX線検査では診断が難しいため、前十字靭帯損傷が疑われる場合はMRI検査を行っている医院を受診した方が良いでしょう。
前十字靭帯損傷の治療
Q.前十字靭帯損傷の治療・リハビリはどのようなものですか? A.前十字靭帯損傷の治療には保存療法と手術療法の2つがあります。保存療法は膝に捻りや曲げ伸ばしが生じないように膝動揺性抑制装具と呼ばれるサポーターを装着して、早い段階から痛みが生じない程度に可動域訓練を実施して筋力低下を防ぐ治療法です。 手術療法には靭帯修復術と再建術の2パターンがあり、多くは再建術が採用されています。前十字靭帯損傷の場合は膝にある他の組織の2次的受傷を防ぐため、再建術による手術療法で治療が行われるケースがほとんどです。再建術は他の靭帯から採取し、大腿骨と脛骨の一部に穴を開けて損傷した前十字靭帯から代用靭帯として使用することで膝の可動域制御を解消できます。 手術にあたっては基本的に膝に小さな穴を開けて、膝関節鏡や手術に使用する道具を入れて行われるため、手術の跡は数cm程度と比較的目立ちにくいです。 Q.どのくらいの期間で治りますか? A.再建術による治療で前十字靭帯損傷が完治するには、日常生活に支障がないレベルであれば術後3~6ヶ月ほどリハビリを実施することで回復できます。 アスリートなどで競技復帰を目指すレベルであれば、その後トレーニングにて徐々に負荷を上げていき、術後10ヶ月~1年ほどで競技復帰できるようになります。 ただし、前十字靭帯の損傷具合や術後の回復状態などによっては完治までの期間が長短するでしょう。そのため、完治の期間は目安であり、膝の状態をみながら治療・リハビリを続けていくことが大切です。 Q.手術は必要ですか? A.靭帯損傷の治療法としては、保存療法と手術療法がありますが、前十字靭帯損傷では手術療法が採用されています。それは他の靭帯に比べ保存的に治癒する可能性が低いためです。 前十字靭帯損傷による膝の不具合を解消して、膝にある他の組織へ影響を及ぼさないためには再建法による手術が必要です。再建法による手術時間は1.5 ~2時間ほどで、入院期間も1週間程度でその後は通院にてリハビリを行います。 Q.スポーツへの復帰はできますか? A.前十字靭帯損傷からスポーツ復帰は可能です。スポーツへ復帰する条件としては膝の不安定さの解消や十分な可動域が確保されていることが前提です。 その上でスポーツを行うための筋力やパフォーマンスなどが機能的に回復していると復帰できると判断できます。しかし、再受傷する可能性がないとは言い切れません。 術後6ヶ月以降からスポーツに復帰できるといわれていますが、術後9ヶ月以降にスポーツ復帰を行うと再受傷率が減少できるとの報告もあるため、経過をみながら徐々にスポーツ復帰することをおすすめします。 Q.最後に、読者へのメッセージをお願いします。 A.前十字靭帯損傷は主にアスリートやスポーツを愛好している方が受傷しやすい怪我になります。受傷後は痛みが徐々に和らいできますが、そのまま放置してしまうと他の靭帯や軟骨の損傷にも影響することや前十字靭帯断裂につながるケースも考えられます。 前十字靭帯断裂の場合は保存療法では完治が難しいため、再建法による手術が必要です。術後の競技復帰を目指している方にとっては治療やリハビリが長期間にわたるため、焦らずに膝の状態をみながら徐々に復帰を見据えていきましょう。加えて、スポーツ復帰に対して恐怖心を持ち合わせていると、復帰が遅くなるといわれていますので心理的な不安も解消していけると順調にスポーツ復帰が目指せるでしょう。