ババアと呼ばれてうれしかった!?【いとうあさこさんインタビュー/前編】
水面下にいながら飛び込んだのが、つい先日も出演した劇団「山田ジャパン」。 「芸人仲間だった山田能龍(よしたつ)さんが、いつの間にか劇団を作ることになっていて。仲間から『女優を探しているみたいだよ』と教えられ、連絡を取ったのがきっかけで、旗揚げから参加することになったんです」 以来、毎年の公演に参加しながら、2024年で16年目。3月7日から15日に行われた公演『愛称⇆蔑称』に出演した。(*このインタビューは舞台上演前に実施) お芝居のテーマは「あだ名」。小学校や中学校で同級生にあだ名をつけて呼び合っていた記憶、私たちにはあるけれど、最近はそれを禁止する学校も増えているそうで。 「今、生徒同士でも『さん付け』で呼び合うのが当たり前らしいですね。私たち世代だと、ピンと来ないんですけど。 もちろんあだ名で嫌な思いをした人もいっぱいいるので、理解できます。でもね、あだ名のどこまでが善意でどこからが悪意なのか、線引きの難しさをすごく考えながら、舞台の稽古に入っています」 あさこさん自身は学生時代からずっと、「あーちゃん」と呼ばれてきた。 「途中、ウーパールーパーが流行った中3の頃は、たまに『ウーパー』とか『ルーパー』って呼ばれましたけど。目と目が離れているのでね(笑)。でもほとんどが『あーちゃん』でした。 それが40歳を過ぎて『世界の果てまでイッテQ!』に出るようになってから、番組中に『ババア』って呼ばれるようになったんです。そのとき、私、『やったー!』って喜んだんです。私にアイデンティティというか、個性ができたと思って(笑)。 私をそう呼ぶナレーションの声とか、番組を作っている皆さんの感じから、愛情が伝わってきましたし。だからババアって、私にとっては悪口じゃないんですよ。 でもそれを見た人から、『ババアって言うのを止めて下さい』という声もあった。同世代の人の二次被害というか。 今回の劇にも出てきますけど、身近でそれを聞いている人たちの心象も、ちゃんと受け止めないといけないんですね」