ババアと呼ばれてうれしかった!?【いとうあさこさんインタビュー/前編】
レオタード姿で満面の笑顔。はきはきと自虐ネタを繰り出して、大爆笑。40歳目前でのブレイクはかなり遅咲きだけれど、当時のいとうあさこさんの強烈なイメージは今も色褪せない。そして彼女のもうひとつの顔は、舞台俳優。演劇、とりわけコメディへの憧れは強く、実は15年も前から舞台に立ち、さまざまな役を演じてきた。所属する劇団への注目度もアップし、さらに力が入っている! インタビュー前編となる今回は、いとうあさこさんが長年舞台に立っている、そのワケを聞いた。
いとうあさこさんが長年舞台に立っている、そのワケは?
レオタード姿のいとうあさこさんが人気芸人の仲間入りしたのは、およそ15年前。ぶっちゃけていて明るくて、“まんまの自分でOK”というメッセージは、アナ雪よりもずっと早く、私たちの心に届いていたのかもしれない。 以来、ピン芸人として着実に活動してきたいとうさんの、もうひとつの顔が舞台俳優。すでに15年以上、舞台に立ち続けているという。 「もともと、伊東四朗さんやいかりや長介さんに、幼少時から大変憧れておりまして。悲喜劇ができる素晴らしい役者さんだと、大人になってからも拝見していたんです。 コメディに対する憧れのような、自分もその板に乗りたいという思いがずっとありました」 東京都で育ち、小中高とカトリックの名門女子校を卒業しながら、19歳で家出。ひたすらアルバイトをして資金を貯め、舞台の専門学校に入学したのは23歳の頃。ミュージカル別科を選んで夜学に通った。 「タップとかダンスとか、実技が学べるからそこを選んだんです。 普通に演劇科というのもあったんですけど、演劇史とか演劇論とか座学の講義が多くて、そういうのは自分で勝手に本を読めばいいし、それよりなんか、実動したかったんですね。 『座ってるヒマはねえ!』って思ってしまいまして(笑)。 で、ミュージカル科に行ったら、影響を受けやすいものですから、すぐに『ミュージカル最高!』って。でもほら、歌もダンスも達者な俳優はもう、山ほどいましたし。1年半学校に通って卒業したあと、ちょこちょこオーディションは受けるんですけど、当然、落ちてばかり」 が、実は1回だけ、予想外のオーディション通過もあったとか。 「劇団四季の一次審査を通過したんです。 あの頃、ある伝説がありまして。浅利慶太先生は届いた履歴書をばっと床に撒いて、そこから何枚か拾って選ぶんだと。そこで拾われる人には運がある、その運を試されるんだって。 で、周りの友達は落ちたのに、よりによって私だけが一次審査を通過したものだから、みんな『あの伝説は本当だったんだねー』って(笑)。もちろん、二次審査であっという間に落ちました」 そんな中でゲットしたのが、子ども向けのミュージカル『アルプスの少女ハイジ』の、ロッテンマイヤー先生の役。 「稽古中に、理由はわからないんですけど演出家の先生が、『あ、君の役は全部アドリブで。ハイジのこと、いろいろいじめちゃって』って言うんです。そのとき初めてネタ帳を作って、意地悪ネタをいろいろ考えて、演じてみました。 すると客席の子どもたちのリアクションがすごいんですよ! ロッテンマイヤーを罵倒しながら大笑い(笑)。それがうれしくて、笑ってもらうことに異常な興奮を覚えたんです。 “そうだった、私、喜劇が好きだった”って思い出して、その流れからお笑いの世界に入ってきたんですけど、そこから13年くらい芽が出ず、水面下にいました」