退職金で住宅購入はもったいない? 貯金した方がよい?
退職後から高齢期における「住まい」
退職前後にかかわらず、住まいについては「賃貸派」「持ち家派」とそれぞれ分かれます。賃貸であれば、ライフスタイルに合わせて、エリアや間取りを選べますし、修繕や固定資産税などの費用を気にする必要がありません。 一方、持ち家であれば、自分好みに改修することも可能ですし、資産を手にすることで安心感と満足感が得られます。一概にどちらが良いということはありません。 では、退職後からの「住まい」にフォーカスして考えてみましょう。賃貸の場合、給与収入がなくなり、限られた収入のなかでの家賃捻出は家計の収支に大きく影響します。 公的年金でまかなえず、継続的に金融資産を取り崩す必要がある場合は、資金枯渇が心配されます。これでは長生きすることが不安材料となりかねません。 一方で、持ち家の場合、子育て時代にはせまいとさえ思っていた自宅が「広すぎる」「段差が危険」と感じられるなど「ライフスタイルに合わなくなってきた」といった悩みが聞かれるのが現状です。
退職金で住宅購入はもったいない?
先日、これまで賃貸住まいであった方から、退職金での住宅購入の是非について相談されました。退職後も家賃を払い続けることに不安を感じているようです。とは言え、ローンを組まずに退職金での住宅購入はもったいない気もするとのことでした。 退職にあたり、今後について考えることは重要です。不安解消の手段として、退職金での住宅購入も選択肢のひとつとなり得ます。 ただし、現状の資産状況および今後の資金計画をふまえたうえで、慎重に検討することが前提となります。退職金の額や65歳以降に受け取る年金の見込額もほぼ確定した時点だからこそ、生活費にかかる費用、人生を楽しむための費用、リスクに備える費用について比較的容易に見積もることができます。 それでも、念のため、不測の事態であわてないように、収入は想定よりも少なめに、支出は余裕をもって見積もっておくことをおすすめします。 住宅を購入するかどうかは、こうした資金計画をふまえたうえでの判断となります。検討の過程で、購入するとしたら「いくらの」物件であれば適切かといった基準も見えてくるでしょう。そのほか、検討すべき点として、 ・夫婦のうち、いずれかが亡くなった後の生活はどうするのか ・財産(購入した自宅)を引き継ぐ人はいるのか、「争族」の火種とならないか ・中古物件の場合、築年数によっては、計画にない修繕負担が生じる可能性 ・買い物や病院など生活の利便性 ・快適性や安全性 などが挙げられます。最近では、とくに都市部での不動産価格は上昇傾向です。それぞれの生活スタイルや価値観にもよりますが、地方移住なども選択肢のひとつかもしれません。 なお、今回の相談では、ローンを組まずに購入とのことでしたが、審査や利息負担はあるもののローンを組んでの住宅購入も選択肢として有効です。 手元資金を確保しつつ、退職金のなかからローンの返済に充てることで資金計画は立てられますし、もしもの場合でも「団信(団体信用生命保険)」により残額の支払いは免除され、資金を遺すことができます。今後の金利上昇リスクについては、状況次第で一括での繰上げ返済を視野に入れておけば安心でしょう。