ふかわりょうさん「スマホを置いて散歩しよう」、一人は孤独じゃないし孤独は不幸でもない
単身世帯が2000万人を超えた。家族や親族が身近にいることを前提とした社会システムは成り立たなくなりつつある。週刊東洋経済11月16日号では、特集「超・孤独社会 ソロ時代の処世術」を組んだ。ふかわりょうさんには、生涯ひとりで生きていくと腹を固めたかのようなタイトルの著作がある。真意を聞いた。 ──ここ数年、『ひとりで生きると決めたんだ』『世の中と足並みがそろわない』というエッセイを上梓し、2024年3月には小説『いい人、辞めました』を出されました。
僕がタイトルのようなメッセージを能動的に発信しているかのように思われがちなのですが、実際は、そのために書いているわけではありません。 ──精力的に執筆をされているのは? 書きたいからです。しっくりこないことが日々、積み重なっているので。ただ、SNSの投稿文のように、共感を求めているわけではありません。自分と同じ感覚の人に出会いたいというわけでもない。 SNSは便利なツールなので悪者にはしたくないのですが、光があることで影も落としています。
■世の中と対峙できなくなった ──影とは? 世の中と、ダイレクトに対峙することが難しくなりました。 ランチやお茶をするお店を探している時、以前はお店の雰囲気やのれんの感じ、店構えをその場で見て、良さそうだと感じたら入っていました。ところが今はSNS上の写真や口コミ、評価、点数に基づいて店を選ぶようになった。知らず知らずのうちに、人の評価、人のレンズを介して世の中と向き合ってしまっている。 僕は毎年アイスランドに行っていました。ブレートの境目や巨大な滝、岩肌むきだしの山々を見ていると、自分が地球に生きていることを実感します。ただ、カメラを持って行くと、ダメなんです。人に見せるわけでもないのに、とめどなく撮ってしまう。しかも毎回、同じ場所で、同じものを撮っていることに気がつきました。