無駄を極限までそぎ落とした「MORI YOSHIDA(モリヨシダ)」世界を魅了する“フラン”とはどんなお菓子か?
フランスで出会ったフラン。“また食べたくなる”味にこだわりを
今では、そのフランで多くの人を魅了する吉田シェフ。じつは、初めはそこまで好きなお菓子ではなかったと話します。吉田シェフ「22歳のときにフランスに行き、地方のお菓子屋さんで働いていました。お昼に近くのお店のキッシュを食べ比べをしていたある日、そのキッシュと同じような形と大きさで、中にカスタードクリームが入っているお菓子を見つけたんです。それがフランでした。“フランってどういう意味? “と聞いたら、スペイン語でプリンだと教えてくれて。型に入っているプリンがあるんだ! というのが、最初の衝撃でしたね。初めて食べたときは、何の変哲もないお菓子で、そこまで好きではありませんでした。しかもフランスのサイズなので、日本人の感覚で考えると1カットがかなり大きい。それでも不思議とまた食べたくなる。気づくと、また食べていたんです。その理由は、ほっとするその「やさしさ」だと感じました。フランを求めて多くのフランス人が列をなすほど、買い求めるのは「フラン」というお菓子がフランスの文化や生活に根付いているからなのだと気づきました。だからこそ基本に忠実に、しっかりと生地を焼いて、アパレイユはほっとする味に。朝にMORI YOSHIDAのフランを見つけて“ラッキー”と思ってもらえるような、身近な食べ物でありたいと思いながら作っています」
はじめはフランを褒められるのが嫌だった。今では誇れる名誉へと
お店のフランはオープン後まもなく、パリを拠点に活躍するスターパティシエ クリストフ ミシャラク氏のInstagramで紹介され話題に。フランへの称賛の声が高まる一方で、当時の吉田シェフの胸中は複雑なものでした。吉田シェフ「はじめは、『フランが美味しい』と言われるのが嫌でした。“このガトーの構成を見てほしい“とか、フランよりもガトーに目を向けてほしいと思っていたんですよね。ただ、いろいろなものを削ぎ落とすほど、結局『フランが美味しいよね』というところに落ち着く。しっかり炊いたカスタードとバニラの香り、生地の食感、そういったものへの評価を考えると、フランが美味しいと言われるのがとても名誉なことだと、今では考えるようになりました。フランはフランスではとてもよく見るお菓子ですが、日本では“はじめまして”のことも多いと思います。ただ、新たにフランに出会う方にも、そうした身近でほっとするような世界観を楽しんでもらいたいです。僕はいつの間にか、“フランスの食文化やフランス菓子をしっかりと伝えなければいけない”ポジションになってしまったと思っています。だからこそ、直球のフランを作り続けたいですね」 About Shop MORI YOSHIDA 東京店 東京都中野区新井2丁目30-7 NSPビル 営業時間:11:00~19:00 定休日:火・水曜日 Instagram:@moriyoshida_officialPhoto/Shintaro Oki
ウフ。編集部 磯部美月